大規模な災害時に地元の建設事業者が中心となって行う道路啓開(道路上のがれきや車両などの移動)について、総務省は4月25日に実態調査結果を公表。同調査により、南海トラフ地震などの大規模な地震の発生が想定される地域以外では、道路啓開計画が未策定であることが判明した。総務省は国土交通省に対し、すべての地域で計画の策定を行い、人員や機材を確保するよう勧告している。
同調査は2021年9月から23年4月まで、全国の5地方整備局、24地方公共団体などを対象に実施(※北海道・中国・九州・沖縄は対象外)。▽道路啓開計画が策定できているか▽車両移動を想定した協定の締結ができているか▽民間事業者が提供可能な人員・資機材の把握ができているか▽計画に基づいて訓練ができているか―などについて調べている。
その結果、首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模な地震による被害が想定される地域では、独自の計画や作業手順書などが策定できており、道路啓開のための取り組みが一定程度進んでいることが分かった。一方で、それ以外の地域(北陸など)では計画が策定されておらず、災害時の対応方針も定まっていなかった。また約3割の機関で、協定締結先の事業者が車両移動作業をできるかを確認していないことが判明した。「がれきの撤去は可能だが、車両移動まではできない」といった事業者の声もあったという。
総務省は、道路啓開は人命救助の観点から初動期の迅速な対応が重要であり、そのためにも平時からの備えが必要だと強調。国交省に対し、災害発生時に対応可能な民間事業者などの人員・資機材を把握し、不足分を確保するよう求めている。
道路啓開は、地震や大雪などの災害発生時に、緊急通行車両などの通行のためにがれき処理や車両の移動などを行い、救援ルートを確保すること。2011年の東日本大震災では国と協定を結んだ建設事業者などが「くしの歯作戦」と呼ばれる道路啓開を行い、震災翌日には太平洋沿岸の主要都市へのアクセスルートを確保したことから注目を集めた。2016年の熊本地震では被災状況の全体把握が難しく、民間団体内の連絡系統が円滑ではなかったことから、啓開がなかなか進まなかったとの報告がある。
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