ルームクリップ(東京都渋谷区、髙重正彦社長)は4月20日、同社が運営するRoomClip住文化研究所とLIVING TECH協会(山下智弘代表理事)の共同でまとめた「スマートホーム事情調査に関するレポート」を解説するライブ配信を実施。「なぜ日本では諸外国に比べてスマート家電の導入が遅れているのか」「どのように訴求すれば日本での普及が図れるか」などについて意見を交わした。
参加者は同研究所の竹内優・水上淳史研究員、同協会の田形梓さん。レポートに使用したデータは、「住まいに関する調査」(2023年LIVING TECH)、「スマート家電に関するアンケート」(2023年RoomClip)、「Consumer Insights」(2022年Statista)。
田形さんによると、スマートホームの国内市場は2021年から26年までの5年間に年間成長率120%で拡大すると予測。グローバル市場は175%成長すると言われている。その背景には、▽共働き・高齢化社会により求められる効率化▽スマートホームの標準規格「matter」の始動▽海外の新築住宅におけるスマートホームのマスト化―などがある。
各国のスマートホームおよびスマート家電の所有率を見ると、「アメリカ」(81%)、「中国」(92%)、「ノルウェー」(66%)であるのに対し、日本では13%(総務省「情報通信白書」令和4年版では9.3%)と低い値になっている。「日本は専業主婦が家庭を支えているからとか、賃貸が多いからハードルが高いのだと言われるが、ジェンダー別の就業率や持ち家率を見ると海外との大差はない」と竹内さん。
そこで各国がスマートホームに対してどのような印象を抱いているかに着目。海外では「セキュリティを高める」「経済メリットがある」「環境にやさしい」といった項目の数値が高かったのに対し、日本では「コストが高い」「ネット接続による利便性」「遠隔操作の利便性」の3項目が上位となった。この結果から海外と同じ訴求では効果がなく、日本ならではの普及モデルが必要だと分析した。
続いて、全体の27%がスマート家電を1台以上持つというRoomClipユーザーの傾向を調査。スマート家電のうち、ロボット掃除機やネットワーク対応の冷蔵庫・電子レンジといった生活家電を所有している人の割合が高いことが分かった。スマート家電を知ったきっかけについては、「Web検索」(21.5%)、「家電の買い替え」(1.1%)、「SNS」(17.0%)が上位に。SNSなどで得た情報が高い割合で、導入に影響を与えていることが分かった。
こうした結果を基に、日本におけるスマートホームの訴求の方向性について考察。▽SNSなどによるパーソナルな情報発信で課題解決手段として認知される▽タイムリーなユースケース(節電など)として発信される▽住まいの設計レベルでスマート化を取り込む(ルンバ基地など)―などに可能性を見いだした。
水上さんは「電気代が高騰した際に、RoomClipでただ『つらい』と言うだけではなく、どのような節約方法を試したかといったアクションが投稿され、それに共感するコメントが寄せられた。この『つらみを解決する』方向性の中にスマート家電が選択肢の一つとして入れば、今後の認知拡大につなげられるのではないか」とまとめた。
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