ドイツで中世から継承される伝統の訓練制度「放浪の旅(ヴァルツ)」。2015年にはユネスコ無形文化遺産に登録された。国が定める厳格な規定のもと、身ひとつで職人が世界各国で修業に励む。世界に冠たる“手工業”としての高い技術力は、いかにして堅持されてきたのか―。その一端を垣間見るべく、今年3月まで大野建設(埼玉県行田市)に放浪の旅で来日し、修業に励むドイツ人大工2人の動向を追った。
ドイツには「マイスター」を頂点とする職人資格の制度がある。同国以外では、スイスやオーストリアで実施されているものだ。マイスターとは、大工など各分野の職人の最高峰の資格の称号。まず同じ職人の資格「ゲセル」を取得し、企業で2年以上の経験を積んだ職人が、マイスターコースを受講後、国家試験に合格すると得られる。
豊富な知識や実績、経験年数があったとしても、マイスターでなければ独立や開業が認められない。職業分野は全41職種ある。マイスター資格審査は、各州の「手工業会議所」に設けられたマイスター試験委員会が実施する。
ドイツの高い技術力を支える背景には、マイスターを頂点とする教育制度が「デュアル(二元)システム」として、学校教育に連動する形で組み込まれている点が大きい。
伝統的な修業放浪の旅(ヴァルツ)
ドイツでは、職人の伝統的な修業の旅として「放浪の旅(ヴァルツ)」を行うことを推奨している。放浪の旅は、ゲセルの資格を取得したあと、故郷を離れ、さまざまな土地を1人で巡って(放浪・遍歴)修業を行う制度だ・・・
この記事は新建ハウジング4月20日号10~11面(2023年4月20日発行)に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。