国土交通省はこのほど「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」を開き、今後の建設業が目指すべき方向性を提言として取りまとめて公表した。契約内容が不透明になりがちな民間工事での請負契約の透明性を高め、価格や工期を競う環境ではなく施工品質などで競う環境を整えることを目標に掲げた。実効性を確保するため、不当に低い請負代金となる契約については、許可行政庁が勧告などの指導監督を行うことも視野に入れている。
提言では今後目指すべき方向性として、(1)受発注者間の適切なリスク分担と価格変動への対応、(2)重層下請構造での賃金行き渡りの確保、(3)重層化した下請構造の可視化、(4)労務費の圧縮を原資とした廉売行為の制限、(5)生産性や施工品質で競うことができる環境の整備―を示している。
CCUS活用で下請構造の可視化を
(1)受発注者間の適切なリスク分担と価格変動への対応では、価格変動時の協議を規定する民間約款(民間建設工事標準請負契約約款)の利用を基本として、「経済事情の激変」や「物価・賃金の変動」時に請負代金の額または工事内容をどのように変更するか、契約書に明記することを求める。受注者から注文者に対しては、建設資材の調達先、建設工事に影響を及ぼす資材価格動向などについて情報提供することを制度化するほか、請負代金の内訳として「予備的経費」や「リスクプレミアムの有無」を記すことを求める。これにより価格高騰時の下請へのしわ寄せや、価格下落時の発注者の負担増を防ぐ。
(2)重層下請構造での賃金行き渡りの確保、および(4)労務費の圧縮を原資とした廉売行為の制限では、「通常必要と認められる原価」を下回る請負契約を中央建設業審議会が勧告することで、受注者が不当に低い金額で請負契約を締結しないよう制限する。また、)▽賃金の行き渡りを簡易に確認できる仕組み▽多能工を育成・評価・活用する仕組み▽閑散期に副業として他社の工事現場で働くためのルール(ガイドライン)―などの構築を行う。
(3)重層化した下請構造の可視化では、CCUSの活用を推進する。CCUSの活用により技能労働者個人の技能が評価できるだけでなく、下請構造の「見える化」を図り、下請企業の施工評価ができるようになる。他にも、受注者による極端に短い工期となる請負契約を制限。許可行政庁がモニタリング調査や建設業者からの情報提供を基に、勧告などを行う。
(5)生産性や施工品質で競うことができる環境の整備では、(4)の廉売行為の制限などにより、生産性が高くて作業の早い下請企業や施工品質の高い下請企業が有利となる環境を整える。これによりBIM/CIM、ICTを活用した施工など、新技術への投資・活用が進むことが期待される。
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