法務省は4月10日、「第5回技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」を開き、現在の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設する方針を固めた。
国際貢献といった表向きの目的と、人材不足の解消という実態との乖離(かいり)がさまざまな問題を引き起こしていることを重視。新制度では人手不足への対策であることを明確にしつつも、日本で働くことを希望する外国人や送出国にとってより良い制度となるよう見直しを行う。
同会議では中間報告として、制度改正に向けた「たたき台」を公表。この中で、技能実習制度の問題点として、▽技能実習制度における職種や作業区分が細分化されているために特定技能と一致せず、スムーズに特定技能に移行できていない(=キャリアが形成できない)▽転籍(転職)できない仕組みが人権侵害や各種ハラスメント、無理な就労、失踪などの問題を引き起こすきっかけとなっている▽監理団体や登録支援機関などの管理監督や支援体制が不十分で、悪質な事業者やブローカーが排除できていない▽来日前後の日本語教育が不十分▽受入れ見込数の設定プロセスが不透明で、受入れ側に必要な人材が確保できていない―などを挙げている。
特定技能への移行を円滑化 中長期滞在を可能に
こういった問題を踏まえ、新制度では企業の人材確保と外国人のキャリアアップを軸に、実態に即した仕組みを構築。技能実習で修得した技能が特定技能としても生かせる制度にすることで、外国人が中長期にわたって活躍できる環境を整える。
具体的には職種を特定技能の分野に一致させ、新たな制度から特定技能制度への移行がスムーズになるようにする。修得した技能の習熟度を測るための技能検定や技能実習評価試験の運用についても見直す。
転籍制限については、効率的に技能を習得するための実習期間を原則とする一方で、人権保護を考慮し、従来よりも制限を緩和する。制限期間は、▽受入れ企業で人材育成に要する期間▽受入れ企業が負担する来日時のコスト▽国内の人手不足に対応するための安定的な人材確保▽労働法制との関係―などを念頭に、総合的に判断する。
監理団体や登録支援機関の在り方については、存続の可否を含めて検討。事業者が安心して利用できる優良な監理団体・登録支援機関にインセンティブを与える方向で考える。受入れ企業での人権侵害や不適正な就労を防止・是正できていない団体は厳しく指導または排除する。日本語が未熟な外国人に対する教育については、自治体なども加えて、支援の役割分担について話し合う。
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