東京都は3月30日、2030年までの空き家対策の方向性を示した「東京における空き家施策実施方針」を公表した。今後の方針として、①既存住宅市場での流通促進、②地域資源としての空き家の利活用、③利活用見込みがない空き家の除却―を対策の3本柱として取り組みを推進する。
「既存住宅市場での流通促進」では、消費者が既存住宅を安心して売買できる住宅流通市場の整備を行う。東京の空き家のうち約7割弱が市場流通用の空き家であることから、これらに対する対策に重点を置く。具体的には、▽専門家によるインスペクション(建物状況調査)▽購入した既存住宅への住宅売買瑕疵(かし)保険▽住宅の維持管理やリフォーム履歴を記録した住宅履歴情報の活用▽不動産取引時の公正性の確保―に取り組む。またリノベーションを実施した住宅をモデルハウスとして活用する民間事業者に対して支援を行うことで、既存住宅の流通や省エネリフォームを後押しする。
「地域資源としての空き家の利活用」では、地域課題の解決につながる空き家の活用事業に重点を置く。取り組みの一例として、▽移住・定住促進に向けた空き家バンクへの支援▽空き家の利活用希望者とのマッチングに取り組む民間事業者への支援―を挙げている。
「利活用見込みがない空き家の除却」では、区市町村が空き家の所在や状態を把握した上で、空家対策計画を策定。空き家の除却方法について整理した「住まいの片付けガイドブック」(仮称)を作成し、区市町村と連携して住まいの終活などの普及啓発を行う。空き家の家財整理や除却方法の相談業務を行う民間事業者などへの支援も行う。
都の「住宅・土地統計調査」によると、都内の2018年時点の空き家数は約81万戸で、10戸に1戸は空き家となっている。このうち「賃貸用の住宅」は約58万戸で、全体の約3割に空き住戸に。さらに「空き家予備軍」とも言える、65歳以上の世帯員がいる単身または夫婦のみ世帯の持ち家は約90万戸となっている。
また壊れた空き家である「腐朽・破損あり」は約12万戸、破損のない「賃貸用の住宅」と「売却用の住宅」は合わせて約55万戸。相続される可能性が高いと思われる「破損のないその他の空き家」は約14万戸で、これらの空き家をいかに活用するかが問われている。
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