明日、4月1日から中小企業を対象に月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられる。2010年4月に施行された改正労働基準法によるもので、大企業についてはすでに適用されている。猶予期間として、これまで中小企業は25%に据え置かれていたが、今後は企業の規模に関係なく、一律1日8時間・1週40時間を超える労働時間に対して、60時間以下は25%分、60時間以上は50%分の時間外賃金を支払う義務が生じる。
時間外労働を深夜(22時~5時)の時間帯に行う場合は、深夜割増賃金率の25%に時間外割増賃金率50%が加わり、合計75%となる。一方、法定休日(毎週1日または4週間で4日以上)に行った労働時間は「法定休日労働」となるため、時間外労働にはカウントされず、割増賃金率も35%とする。それ以外の会社が独自に決めた休日に行った労働のみ時間外労働に含める。
例えば、週休2日制(土日休み)の企業の場合、土曜日の労働は時間外労働として25%(または50%)で計算。日曜日の労働は法定休日労働として35%で計算する。
1時間当たりの賃金は、「月給÷1年間における1カ月平均所定労働時間」で計算。月給に家族手当、扶養手当、通勤手当、住宅手当などの手当は含まない。
代替休暇や多様な労働時間の導入を
厚生労働省では時間外労働や割増賃金の支払いを減らすための方法として、代替休暇や多様な労働時間制度を紹介している。
代替休暇は月60時間を超える時間外労働を行った労働者に対し、引上げ分の割増賃金を支払う代わりに有給休暇を与える方法。月60時間を超えた分については通常50%分を支払わなければならないが、それを25%分の賃金に相当する休暇に代えられる。
例えば、60時間を超える時間外労働が16時間だった場合は、4時間分の休暇に代替えできる。ただし、▽労使協定を結ぶこと▽他の有給休暇と組み合わせて1日または半日休暇とすること▽2カ月間以内に取得すること―などの条件がある。
労働時間制度には、労働時間の合計を変えずに働く時間帯や期間を変える方法(変形労働時間制・フレックスタイム制・勤務間インターバル制度)、実際の労働時間数ではなく一定時間を働いたものとみなす方法(みなし労働時間制)、時間配分を労働者の裁量に任せる方法(専門業務型裁量労働制)がある。
社員全員が同じ働き方をするのではなく、個人の業務の特性に合った労働時間制度を採用することで、働く時間の合計を大きく変えることなく、忙しい期間や時間帯に人材を集中させたり、閑散期に休暇を与えたりすることが可能となる。
1級建築士、2級建築士および木造建築士は、「みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」での就労が認められている。「みなし労働時間制」は、労働時間の算定が難しい場合に、特定時間を働いたとみなすことのできる制度。▽在宅(自宅)勤務であること▽常時通信可能な状態ではないこと▽随時使用者の具体的な指示が及ばないこと―が条件となっている。
「専門業務型裁量労働制」は、業務遂行の手段や方法、時間配分など労働者の裁量にゆだねる必要がある業務について、特定時間を働いたとみなせる制度。建築士法(昭和25年法律第202号)第3条から第3条の3までに規定する設計・工事監理者(建築士を含む)が対象となる。建築士の指示を受けて補助的業務を行う者は含まれない。
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