3月17日、川崎市は新築建物に太陽光パネルの設置義務づける条例案を可決した。さかのぼること4カ月前、ある住民から同市に対し「太陽光発電システム設置義務化において、製造、運搬、設置、廃棄における環境負荷の内容を資料に取り込み、カーボンニュートラルの根拠が示せる形で話を進めてほしい」との陳情が出された。また12月15日には太陽光設備がもたらす各種災害を理由として、義務化に反対する請願も提出されている。このうち請願については3月10日付で不採択となったが、住民への追加説明が必要だとして説明資料を公表している。
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以下は、同市に寄せられた主な意見(パブリックコメント)と、その回答をまとめたものだ。同様の反対意見は、すでに義務化を決めた東京都などでも見られる。今後、他の地方や地域で義務化が進められた場合にも、同じ議論が繰り返されることが想定される。義務化はされなくとも、地方や地域が独自に補助金を出したり、環境に関する条例に再生エネルギーに関する項目を盛り込んだりするケースも増えるだろう。地域の顧客から太陽光設備に関する質問を受けた際に正しく回答できるよう、日頃から備えておきたい。
住民への回答のポイント(川崎市のケース)
①環境負荷について
▽LNG火力(複合)、石油火力、石炭火力と比較して明らかに優位▽廃棄・処理されるまでの消費エネルギーを考慮しても環境負荷が低い▽屋根置きの場合、一定の断熱性を含めた省エネ性能が確保される▽発電による環境負荷低減効果が発生することから、環境負荷量は相対的に低くなる。
②「水没・破損時に感電・漏電する」「有害物質が流出する」
▽太陽光パネルの取り付け強度はJIS規格により設計されており、正しく設置されれば自然災害による損壊は低リスク▽水没時の感電リスクもこれまでに確認されていない▽太陽光パネルには鉛が含まれているが、水に対して優れた耐食性があり、リスクは一般的な電気設備と同程度。
③「パワーコンディショナー(パワコン)などの更新に費用がかかる」「撤去時に費用がかかる」
▽太陽光発電システム(4KW)を30年間設置した場合、初期費用回収後の収益でパワコン更新やパネル撤去処分費用も賄える▽パネルを交換する(同時に脱着する)場合は、設置工事に重機や足場の使用費用が計上されるため、撤去での負担費用が低減される▽「リース」や「PPAモデル」では撤去処分費用なども含めた金額となるため負担にはならない。
④「建売住宅にパネルが標準装備される」「パネル設置が強要される」
▽特定建築事業者に一定の裁量を持たせる制度であり、すべての新築住宅に太陽光発電設備を設置する制度ではない▽パネルの設置を強要するような状況があった場合は、事業者に対して行政指導を行う。
⑤「マンション購入費・管理費などに費用が上乗せされる」「戸建住宅の建築費用が通常より高くなる」
▽売電により一定の収益が見込まれることから、管理費用などは上乗せされるよりも低減される可能性が高い▽戸建て住宅の場合、初期費用は掛かるが長期的な運用により回収が可能▽リースやPPAモデルを活用する方法もある。
⑥「産業廃棄物処理業者が不足」「リサイクルに関する法整備がなされていない」「不法投棄・海洋投棄による汚染が懸念」
▽市内や近隣他都市に太陽光発電設備をリサイクルできる施設が複数ある▽需要が増えれば設備も増設される▽環境省が「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を公表している▽法人が不法投棄を行った場合、5年以下の懲役または3億円以下の罰金などが科せられる。
⑦「新彊ウイグル自治区での強制労働への懸念」
国の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」をもとに、人権尊重のための取り組みを行っている。
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