東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、電力小売販売を主力とする企業(新電力専業企業)231社の動向調査の結果を発表した。最新期の損益が判明した195社のうち、「黒字」は104社(構成比53.3%)、「赤字」は91社(同46.7%)で半数近くが赤字となった。赤字転落した前期から状況が改善せず、自前の発電施設や固定価格の調達先を持たない新電力で、厳しい状況が続いている。
最新期決算3期連続比較可能な124社の売上高合計は、前期比6.3%減の8兆5281億円と減収に転じ、利益合計も1068億円の赤字となった。電力小売自由化で、新電力市場は拡大を続けたが、電力需給ひっ迫や調達価格の高騰などにより事業環境が悪化。サービス停止などで売上が減少し、2億円の赤字だった前期から赤字幅がさらに拡大した。
利益の増減では、増益企業の構成比が52.6%、減益企業が46.7%、横ばいが0.5%となり、減益企業が約半数を占めた。売上高別(対象201社)では、売上高1~5億円未満の57社(構成比28.3%)が最も多く、100億円以上が42社(同20.9%)、10~50億円未満が39社(同19.4%)と続いた。売上高10億円未満で、計107社(同53.2%)と全体の約半数を占めている。一方、売上高1000億円以上の7社は、全国展開の大手企業と、地域・顧客層を絞って独自サービスを提供する企業の二極化が特徴となっている。
2022年には新電力の倒産が8社発生。官公庁向けに業績拡大したホープエナジー(破産、負債約300億円)や、東北電力と東京瓦斯が共同出資したシナジアパワー(破産、負債約130億円)などの大型倒産のほか、地域新電力の郡上エネルギー(破産、負債約2400万円)など、事業規模を問わない経営破たんが表面化した。2023年もすでに1件発生しており、サービス休止や事業撤退を表明する企業も相次いでいる。同社は、事業者のサービス停止や経営破たんが続くと、新電力に対する信頼性が揺らぎ、顧客離れの悪循環が続く可能性があるとした。
新電力のサービス停止や「市場連動」プランの電気代高騰のため、新電力と契約を解除したものの新たな電気の契約先が見つからない「電力難民」問題が発生。割高な電気代が設定された「最終保障供給契約」のコスト負担が企業の重荷となっている。新電力のシェアは18.0%と1年あまりで4.5ポイント低下し、売上高も減収するなど、市場縮小が急速に進んでいる。
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