文部科学省は3月14日、令和4年度「第3回学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」をウェブ会議方式で開き、その中で学校施設の脱炭素化に関するWGの調査報告書案を発表した。同WGでは快適で健康的な教育環境を確保しつつ、建物による脱炭素化を推進するため、学校施設のZEB化の実現手法などを検討している。
太陽光設備の設置率は約34%
地方公共団体が保有する非住宅建築物の約4割は教育施設。このうち公立小中学校施設の約4割は築40年以上が経過しており、断熱・気密性能の低さが課題となっている。2022年9月1日現在の空調設備の設置率は普通教室で約96%、特別教室で約61%、体育館等で約12%。公立小中学校の約95%が避難所に指定されているが、防災機能としても有効な太陽光発電設備の設置率は約34%にとどまっており、設備容量も20kW未満が約76%を占めている。一方、設置数は令和3年度までの5年間で4626校から9706校に増えている。
文科省では公立小中学校施設の脱炭素化を進めるため、積極的なZEB化の実現、計画的な省エネルギー改修など推進。代表的なZEB化対策項目として、①照明器具の高効率化、②外皮(外壁・屋根など)、開口部(窓など)の高断熱化、③日射遮蔽(しゃへい)、④空調設備の高効率化、⑤太陽光発電設備の導入―を挙げた。
具体策は以下の通り。①照明器具の高効率化では、LEDの普及100%を目指すほか、在室検知制御を活用する。自然光(昼光)を取り入れて人工照明の利用を減らす。ライトシェルフ、ハイサイドライト、トップライトの設置による採光を行う。②外皮・開口部の高断熱化では、断熱材の採用により躯体の表面と室内側の温度差、室内の上下温度差や温度むらを最小限にする。③日射遮蔽では、高断熱ガラス・高性能サッシの導入および庇(ひさし)やブラインド、ルーバーなどの設置を行う。④空調設備の高効率化では、児童生徒の教室移動を考慮して、使用パターンが類似する部屋を同系統とする。全熱交換器・DCモーターを採用した給排気ファン・自然換気システムなどの導入、フィルター・熱交換エレメントの定期的な清掃を行う。
技術的ノウハウの発信を
国による地球温暖化対策では、学校施設についても▽新築事業は原則ZEB Oriented相当以上▽2030年の新築平均をZEB Ready相当に▽2050年のストック平均をZEH・ZEB基準に▽2030年に設置可能な建築物の50%に▽太陽光発電設備を導入―などを求めている。現状としてはZEB化を実現した学校施設はわずかであり、先導的なZEBの整備事例や学校施設における脱炭素化の技術的ノウハウなどの蓄積・発信が重要となる。
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