国土交通省の不動産・建設経済局建設業課が3月8日に、労務費や原材料費、エネルギーコストなどの価格上昇分の円滑な価格転嫁推進のため、主要な民間団体や職能団体をはじめとした建設業者団体、地方公共団体などに対して、発注者・受注者間の協議の場を設けるよう要請文を発出していたことがわかった。独占禁止法に関する啓発に加え、優越的地位の濫用行為に対しては厳正な法執行を行うなど、取り組みを強化する考えも併せて示している。
この要請は公正取引委員会(公取委)が建設業を含む主要業種8万社を対象に実施した「独占禁止法上の『優越的地位の濫用』に関する緊急調査」(回答数3万1061社、令和4年12月27日公表)を受けて行ったもの。立ち入り調査や聞き取り調査を含む同調査で、特に総合工事業で価格転嫁に関する交渉が難航している実態が浮かび上がった。同省は該当する企業や自治体に対して改善を図るよう呼び掛けている。
総合工事業などで顕著
要請文では独占禁止法に触れる内容として、①コストの上昇分の取引価格について交渉の場で協議することなく据え置くこと、②取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メールなどで取引の相手方に回答しないこと―を挙げた。①②に該当する行為が認められた発注者(総合工事業149社、建築材料などの卸売業131社)に対しては、公取委が注意喚起文書を送付したことを明らかにしている。
総合工事業では発注者の方が取引上の立場が強く、受注者側から価格転嫁を言い出しにくい、取引を切られるなど受注に与える影響を考えると実際に申し出ることが難しいといった背景がある。なかでも発注者が総合工事業、地方公務、不動産取引業、不動産賃貸業・管理業などの場合、発注者兼受注者が総合工事業の場合、受注者が窯業・土石製品製造業、総合工事業、道路貨物運送業などの場合に価格転嫁の要請が滞る傾向があることが、要請文の中で指摘されている。
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