2021~2022年に起きた内外産木材製品の供給混乱と価格高騰は工務店に大きな影響を及ぼした。現状は高騰した木材製品価格が高値修正局面に入り、材料を入手できないという問題も解消されたが、供給混乱は依然として続いている。マッチポンプのような展開でうんざりする話だが、2022年第4四半期以降、木材製品輸入が激減しており、目下の成約状況を踏まえると2023年第1、第2四半期も輸入抑制が続くのは確実で、在庫過多に陥っていた欧州産、ロシア産針葉樹製材需給は今春を前後して再び引き締まってくる。
欧州産地との2022年第4四半期交渉は空転を続け、ラミナなどの原材料はともかく、KD羽柄完製品は通常比で半分以下の成約に終始したという。2023年第1四半期交渉も大幅に遅れ、引き続き成約数量は低調にとどまっている。入荷までのリードタイムが長い欧州産製材輸入は2023年第2四半期も低調な輸入になる公算が強く、過剰感のあった在庫が一気に調整されてくる。
欧州産地の日本向け輸出価格が底打ちしたことで、今後の為替動向にもよるが、商社筋の期末決算セールを除けばこれ以上の大きな下げは考えにくく、ホワイトウッドKD間柱既製品は問屋卸値7万円(㎥)弱前後が底値圏か。
ロシア産KD羽柄材も同様だ。輸入数量の落ち込みという点では最も顕著だ。2022年第1四半期には月次9万㎥の輸入となったが、2022年第4四半期月平均は3万3000㎥、2023年1月輸入も3万3000㎥となった。ロシア産地は中国市場の木材需要動向への期待感が大きいと考えられるが、日本からの引き合い回復も待ち望んでいる。
日本向け主力製材工場が生産を停頓
米加産製材は2022年前半にかけ輸入が増加したが、最大の輸入製材産地であったかつての供給力はなく、日本にとって最大の製材供給国であったカナダの2022年輸入量は94万㎥と遂に100万㎥を割り込んだ。今やカナダから日本向に供給される製材の大半が2×4工法建築物向けSPF2×4製材となっており、米ツガ、米松KD材は特に落ち込みが顕著だ。
カナダBC州沿岸の日本向け主力製材工場が生産を停頓させており、引き続き米ツガ、米松製材供給は限られた数量となる。米国製材市況暴落と需要減退を受けてSPF製材の日本向け拠点であるカナダ西部内陸産地も現在、近年にない減産が行われている。
首都圏の木材製品輸入拠点である東京港は2022年夏場に21万㎥と2021年前半の2倍強まで在庫が増加したが、2023年2月末時点で16万㎥強まで在庫調整が進んでいる。今のところ在庫調整速度は緩慢だが、今後、輸入減に伴う需給引き締まりが市場に浸透することで在庫補充買いが強まり、在庫減少速度も速まってくると予測される。
首都圏近郊の物流倉庫にもかなりの数量が積み増された経緯があり、こちらの動向も注目される。2022年9月末にも一部で見られたが、品目によっては輸入関係者による期末決算セールも想定され、こうした情報は迅速に収集する必要がある。
国産材針葉樹への転換を
今回の輸入木材製品供給減への打開策として取り組まれた国産材針葉樹への転換は引き続き工務店の木材製品調達において極めて重要だ。適切な人工乾燥(KD)が施された構造材や羽柄材、国産材を原材料にした構造用集成材、新しい木質構造材である構造用LVL、CLT、NLTといった建築材料も製造・供給体制が徐々に整備されており、国の補助事業も活用して非住宅木造建築も視野に入れた検討を進めていくことが望ましい。非住宅木造でも規模の小さな物件は工務店の領域と考えるべきであろう。
杉KD105mm角(特等)、杉KD間柱、杉KDタルキの卸売価格は8万円台まで下がっている。ただ、今春以降の輸入KD製材需給引き締まりで国産材転換の動きが強まるようだと、杉、桧KD製材価格の反発も予想される。
目下の建築材需要低迷を最も体現しているのが針葉樹合板だ。2023年1月末時点の針葉樹構造用合板在庫は14万7000㎥、前年同月比で倍増している。製造は大幅に減少しているが出荷の落ち込みが響き在庫を増加させた。国内合板メーカーは価格維持に向けて減産を強化しているが地合いは弱い。
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