「高意匠×高性能」が注文住宅の王道となった昨今、可能な限り耐震や断熱などの性能を高めた「超高性能住宅」がニッチ市場を確立しつつある。超高性能化により建物のかたちや納まりはどう変わるのか、材料選定や施工品質を保つポイントは何か。トップランナーの2人に自社の取り組みを中心に語ってもらった。
司会・構成・文:大菅力
POINT1.性能と意匠の両立
家のかたちは自然環境と暮らしやすさに最適化させる
西方 私が菊池組の存在を知ったのは2016年のこと。「日本エコハウス大賞」(建築知識ビルダーズ主催)の審査員をしていたときに彼らのプレゼン資料を見て「整った住宅だな」と感じた。
同社のあるむつ市は東北でも自然環境が厳しい地域。そのなかで性能はトップクラスで意匠も洗練されていた。
通常、高性能化を図ると断熱厚が増すため壁や屋根などがぶ厚くなる。そのため各部の取り合いなどがごつくなりがちだ。それを繊細に納めていて「若い世代は吹っ切れている」と感じた。私たちの世代は前例もなく、情報も少なかったので、手探りで性能的な課題を1つずつ解決していった。菊池さんの世代は高性能化のための基本的な技術は普及しているので、それを意匠とどう両立させるかが最初からテーマになっている。
菊池 私たちの世代は先輩たちが試行錯誤をしながら汎用化した工法や納まりをもとに考えることができる。その点は有利だと思う。今ところはそれほど新しい手法を生み出してはいないが、原理原則を踏まえて汎用化した手法を再解釈し、新しい工法や納まりを試み続けている。
―性能と意匠の片方を重視すると片方は疎かになるとよく言われる。どのように両者を同時に高めていくのか。
菊池 地域性から必然的に求められる性能や機能がある。それに正面から向き合って意匠としても生かすように考えている。当社が手掛ける住宅はフラットルーフの箱型でガレージ併設、南面に大開口を設けた計画が多い。北東北の日本海側の冬は曇天の日が続く。それでもUA値0.20(断熱等級7)程度に躯体性能を高めることで、薄曇りの弱い日差しや曇天の狭間の晴れ間などの日射取得により暖房負荷が大幅に減る。それには限られた日射を最大限に取得すること必要があり、南面に大開口を設けることになる。
同様にこの地域は雪が多いので、積雪時の車の出し入れや車と住宅の行き来がしやすいこと、雪掻き手間の軽減が求められる。これらを解決するには・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー3月号(2023年2月28日発行)/設計施工を究める超家づくり術<超高性能編>』(P.18~)でご覧ください。
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