政府は2月28日、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。ロシアのウクライナ侵略に起因する国際エネルギー市場の混乱や国内の電力需給ひっ迫等への対応、 グリーン・トランスフォーメーション(GX)が求められることなどを踏まえ、2月10日に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」に基づき、(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進、(2)安全確保を大前提とした原子力の活用――に向けて、関連法の改正を図る。
改正法案の概要は次の通り。
(1)①再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(電気事業法・再エネ特措法)=電気の安定供給の確保の観点から特に重要な送電線の整備計画を認定する制度を新設、▽認定整備計画のうち、再エネの利用の促進に資するものは、工事に着手した段階から系統交付金を交付
②既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進(再エネ特措法)=地域共生や円滑な廃棄を前提に、太陽光発電設備の追加投資部分に、既設部分と区別した新たな買取価格を適用する制度を新設
③地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(再エネ特措法)=違反事業者に、FIT/FIPの国民負担による支援を一時留保する措置を導入、違反が解消された場合は相当額の取り戻しを認めるが、解消されなかった場合は支援額の返還命令を新たに措置▽認定要件に事業内容を周辺地域に対して事前周知することを追加(事業譲渡にも適用)
(2)①原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)=安全を最優先とすること、原子力利用の価値を明確化(安定供給、GXへの貢献等)▽国・事業者の責務の明確化(廃炉・最終処分等のバックエンドのプロセス加速化、自主的安全性向上・防災対策等)
②高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(炉規法)=原子力事業者に対して、運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的評価を行うこと。その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、原子力規制委員会の認可を受けることを新たに法律で義務付け
③原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)=運転期間は40年とし、ⅰ)安定供給確保、ⅱ)GXへの貢献、ⅲ)自主的安全性向上や防災対策の不断の改善について大臣の認可を受けた場合に限り延長を認める▽延長期間は20年を基礎として、原子力事業者が予見し難い事由による停止期間(α)を考慮した期間に限定する
④円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理法)=今後の廃炉の本格化に対応するため、使用済燃料再処理機構に、ⅰ)全国の廃炉の総合的調整、ⅱ)研究開発や設備調達等の共同実施、ⅲ)廃炉に必要な資金管理等の業務を追加▽原子力事業者に対して、同機構への廃炉拠出金の拠出を義務付ける
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