マーケティング頼りの危険性
自社のリノベーション事業は市場の中でどこに置かれるのか、ポジショニングマップを私なりに解釈し、縦軸に工事単価と横軸に性能への追求を設定した例です。大切なことは、需要があり、競合が限られ、自社の強みに適合することであり、自社がマップ全体の中で明確な位置づけにあること、それこそが、地域で自社が競合と比べて高く評価されるポジションであり、競争優位性につながる考え方です。
多くの企業は不況や市場縮小に直面した時、テクニックありき、マーケティング先行で取り組みがちです。自社の強みや事業の本質を把握することなしに、何か一つの打ち手だけを採用してしまうことがあるようです。リノベシフトにおいて、必要なことはまずは自社に対して真摯に向き合うことであり、市場や時流の見極めです。もちろん集客テクニックも必要ですがそれらを包含した全体設計からの視点が大切です。
競合他社と同質化しないよう注意しよう
「より良く、独自性がある」を再度強調したいと思います。同じ地域内で他社が既に実践している取り組みを模倣することは得策ではありません。あるいは、競合他社にすぐ模倣されてしまうようなリノベシフトなら、結局同質化しやすく、事業化としては強い事業になり得ていないと考えるべきです。「より良く、独自性がある」これは、差別化の視点では「地域内の他社が徹底できていない、お客様にとって、社会にとって良いこと」かつ、ビジネスモデル視点で言うと「組織的に機能し、模倣困難性がある」という意味合いです。
経営上、持続可能性が重要である理由は高い社会的意義に加えて、エンドユーザーの消費志向、ひいては工務店経営に大きく影響を及ぼすものになりつつあると考えるからです。今後、ますます、工務店が提示する価値観や世界観に共感できるかどうかの比重が判断基準において増してくると考えられます。時代とともにリノベーションの中心顧客層がまた次の世代へと変れば変わるほどその傾向が強まるのではないかと見ています。
”存在意義”という本質を押さえたアウトプットを
「今、自社を取り巻く住宅業界はどのような状況にあり、自社が求められる役割、果たすべき役割は何なのか、その役割に対して、工務店として自社は何を追求していくのか」を考え、それらを地域に明確に提示していくこと。「判断材料となる情報を開示してください、でないと選べません」という時代において、存在意義という本質を押さえたアウトプットであることは欠かせない視点だと思います。
人口減少し、経済状況が不透明な時代において、工務店が長期的に繁栄し、顧客や地域に貢献していくためには、リノベ-ションは単なるトレンドで終わらせてはいけませんし、定義があいまいなまま普及させてはいけないと考えています。今こそ、リノベーション事業を通じて、これから住宅産業がどうあるべきか、地域においてどんな工務店として、どのように発展していくのか思い描くきっかけにしていただければ幸いです。そして、各地域から、リノベーション事業をリードしていく先導的な工務店が1社でも多く誕生することを願っています。
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