国土交通省は2月17日、バリアフリー設計に関するガイドライン「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の内容点検を目的とした「第4回フォローアップ会議」を実施。政令の基準見直しに向けて令和5年度内に検討WGを設置する方針を固めた。3~4回程度の会合を経て、年内にも新基準を策定したい考え。建築物のさらなるバリアフリー化に向けて、車椅子使用者用のトイレ設備および駐車施設の設計、車椅子使用者用客席の設置数などを含めた新たな基準値を設ける。
高齢者・障害者などの当事者団体の意見を取り入れ、社会の変化に対応した新たな設計基準や設計事例、既存建築物の改修事例なども盛り込む。基準に適合した建物へのインセンティブの導入、地域の事情に応じた条例制定の促進方法、交付金制度の活用についても検討する。
配慮不足の「残念事例」も追加
設計事例では優良事例・先進事例だけでなく、利用者への配慮が足りない事例、いわゆる「残念事例」も当事者団体を通じて収集する。一見、バリアフリーに配慮して設計しているように思えるが、実際にはユーザーのニーズを踏まえていない設計、位置などが適切ではないために使いづらい事例などを、施設名を伏せた形で紹介することで設計者・施工者の意識を高める。一例として、階段しかない2階建ての店舗で2階にバリアフリートイレがある例が挙がった。
「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」は平成18年に制定された「バリアフリー法」に対応した建築基準。延べ面積2000㎡以上の特別特定建築物(学校、病院、店舗など)を新築する際には同基準に適合させる必要がある。同法に基づく条例の場合は2000㎡未満の建物も対象として含めることが可能で、高齢者・障害者のための共同住宅も対象となる。今回の改正では地域の実情に応じた柔軟なバリアフリー化を進めるために、政令の改正を念頭に基準を見直す。
フォローアップ会議は年2回開催され、当事者団体や建築関係団体、地方公共団体、有識者を交えてガイドライン内容の点検を行っている。建築業界からは日本建設業連合会、日本建築家協会、日本建材・住宅設備産業協会などが参加している。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。