「兆し」に敏感になる
具体的に現れるまでに時間がかかるが確実に起きている変化、あるいは普段は見過ごしがちな連続的で小さな変化とは何か。
例えば、日本銀行が定期的に行なっている「生活意識に関するアンケート調査」という調査があり、その中で消費意識に関する問いがある。例えば「今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること」を見ると、上位には「価格が安い」「安全性が高い」「長く使える」「信頼性が高い」「機能が良い」「健康に良い」といった項目がくる。参考までに、例えば2019年1月と2023年1月の回答結果を比較すると「重視すること」として「価格の安さ」「長く使える」「信頼性が高い」という項目の割合が高まっていることがわかる。
このように、消費者の中の隠れた微かな変化こそが、実は大きな事業環境の変化なのだ。ただし、紹介したような調査もあくまでも調査であり、「傾向」を示したものでしかない。言い換えれば、自社を取り巻く事業環境の変化に気づくためには、加えて自社の商圏の中での日常をよく観察することも必要だ。
CXへのつながり
購入前や購入後を含む製品・サービスの購入プロセスで受け取る顧客視点でみた「顧客の体験」の水準が高いか(良いか)、という取り組みが、CXを高めることであることは前回述べた通りだ。
例えば「長く使える」について考えると、そもそも顧客から「長く使える」という期待を引き出すことができるかだ。
実は内なる期待というのは顧客自身も自分の言葉にならない場合もあるからだ。自分も言葉に表せなかった重要な期待に「気づきを与えてくれる」という体験は、顧客目線からすれば満足度も上がる好印象な体験となるはずだ。
あるいは製品の観点でも、強固で高い耐久性の部材・建材を用いるだけでなく、住まいを長く持たせるための暮らし方や扱い方の伝達、時には伴走することも好印象な体験となるはずだ。
顧客の内側にある変化も事業環境の変化と捉え、その変化に適応していく。そのための一つのやり方がCX向上につながる取り組みの実践だ。〈続く〉
<前回まで>
連載#1 いま、伝えたい。「工務店こそ圧倒的“顧客体験”を高めよ」
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