新CX論の第一回目では、事業を取り巻く環境変化に対応するための一つの考えや活動が「CX(の向上)」であると書いた。
変化に対応するとなれば、「どんな」事業環境の変化を捉えておくべきか。例えば、昨今の建築資材や部材の値上げのニュースなども事業者にとっては自社の収益に直結する話であり、関心を持たない事業者はいないはずだ。また、住宅性能基準への適合など「法律やルールの変化」といった事業環境の変化は顕著であり、しかも義務という点で事業者にも消費者にも意識されやすい。
しかし、これらの変化は顕在化しやすく、もはや事業の前提とも言うべき変化であり、さらに顧客の購入判断も「性能が高いから購入する」といった単純なものではなくなってきている。では、どのような「環境変化」を注視しておくべきなのか。
変化を捉える視点
業界動向に加える視点として、例えば、国土交通省が毎年行っている『住宅市場動向調査』報告の「建築(購入)、入居にあたり影響を受けたこと」という内容が参考になる。
注文住宅、分譲住宅、中古住宅、民間賃貸住宅の各種別それぞれの検討者、購入者が「影響を受けたこと」の結果が示されている。「影響を受けたこと」をさらに細かく見ると、「工務店や住宅メーカー、購入した住宅を見つけた方法」「景気の先行き感」「家計収入の見通し」「地価/住宅の価格相場」「住宅取得時の税制等の行政施策」「従前住宅の売却価格」「金利」といった項目がある。
行政も見ている経済動向にまつわる視点は比較的把握しやすい変化であり、定期的に見続けている経営者も多いと思う(ただし、政府統計や日銀の発信などに直接、定期的に触れているかは重要だが)。こうした経済動向の変化は顕在化しやすいことに加え、比較的短時間に消費者の動きの変化として現れやすい。
しかし、顧客の暮らしに現れる問題を解決する製品・サービスの改善や革新に貢献する変化の把握とは、こうした顕在化しやすい変化だけでは不十分だ。実は、第二回のテーマである「事業環境の変化をきちんと捉える」において捉えておくべき環境変化とは、具体的に現れるまでに時間がかかるが確実に起きている変化、あるいは普段は見過ごしがちな連続的で小さな変化だ。
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