住宅市場が今後どうなっていくのかについて、さまざまな観点から考えてみたい。本稿ではその一つとして、「注文住宅における予算の二極化」というテーマを取り上げる。ここでの二極化とは、「ローコスト」商品と「ハイエンド」商品により分かれていき、中間層が薄くなっていくことを意味している。
背景として、今後起こり得る「住宅購入予算」の変化がある。①平均給与の停滞、②インフレによる生活費の増加、③金利上昇のリスクがある。基本的には、給与が上昇し、資金的な余裕が生まれることによって、住宅購入は踏み切りやすくなるものだが、外部環境は悪化していき、購買意欲は上がりにくいといえるだろう。
バランス重視のローコスト商品
一次取得層の住宅購入のきっかけは、「家族構成の変化によって手狭になったこと」と「家賃がもったいないと感じたこと」によるものが大きい。家賃並みのコストを既に支払っていて、それがローンに置き換わる場合は、ローンに含まれない諸費用をクリアできれば、購買意欲への影響は比較的少ない。
この層は「コスパ志向」が特に強いので、顧客ニーズが強いところをバランスよく取り入れたうえで、コストをおさえられている企業が強い。また、その価格を維持するには原価を抑える為の自社製造やバイイングパワーが必要であり、一定規模以上の企業に集約していくと考えられる。
また、これまで家賃以上に背伸びができていた層も、先述した「住宅購入予算」の変化によって、背伸びがしにくくなってくる。オーダーの注文住宅(2300万円~)を提供している会社でも、よほどの差別化ができていない場合、ローコスト商品に流れていく可能性が高いのではないか。現在も、セミオーダーの住宅(2000万円周辺)が1000棟超の多拠点展開型のビッグビルダーにシェアが集まっていることと無関係ではないだろう。
また、地域で力のあるセミオーダーの住宅会社(2000万円周辺)も、多拠点展開型のビッグビルダーとのシェア争いに勝つ必要があり、その為には、相当な商品力、ブランディング、コスト調整力が必要となる。現状の営業利益率が5%を切っている場合、現状の規模の大きさにかかわらず、生き残りが厳しくなることも充分に考えられる。
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