建設資材の価格が上昇し、生産や流通も不安定。そんななかベーシックな素材である木材(無垢材)の活用が見直されつつある。無垢材は多用途に使うことができ、工夫次第で独自の意匠表現が可能になる。「高意匠×高性能」の王道とも言える、無垢材と大工を生かした設計施工のポイントについて、無垢材に造詣が深い2人に聞いた。
司会・構成・執筆:大菅力 執筆:編集部(P22-25)
田中工務店 代表取締役社長
田中 健司 氏
東京・江戸川区の田中工務店代表取締役社長。創業者から数えて三代目。
高性能な躯体をベースに大工による造り付け家具を組み込んだ家づくりには定評がある
木又工務店 代表取締役社長
木又 誠次 氏
大阪・四條畷市の木又工務店代表取締役社長。父親の跡を継いだ二代目の大工棟梁。
木材と手道具へのこだわりを大事にしながら高性能住宅にも取り組んでいる
POINT1.木を知る 多様な木の性質と表情、経年変化を知る
−木材の魅力をどのように定義したらよいか。
田中 ひと言で言えば不揃いと言うこと。プリント製品と同様に統一感を求める方がいるがまったく違うものだと説明している。木材は樹種も違えば板目も柾目もある。表面仕上げでも変わる。それでも空間全体としては調和が取れるし経年でエイジングするのも魅力だと思う。
木又 木材が設計力をカバーしてくれるところもあると思う。ある程度整った空間であれば、良質な木材を使うことで確実にいい雰囲気になる。加えて良質な木材は加工もしやすい。安い材は乾かしてる間に反りや割れが出てくるなど歩留まり悪くなりがちだ。多少単価高くても良質な木材を買うと歩留まりがよくて加工もしやすく、仕上がりもきれいになる。結果的に利点が多い。
−仕上げ材や造作材を対象にしたときに良質な木材とはどんなものか。
木又 見た目でいうと、年輪(目)が細かいほうが品がいい。その点は板目より柾目に軍配が上がる。ただし板目でも、中杢のような板目が細く入っているものは品がよく映る。なお目が細かくても木目が極端にはっきりしていると個性が強すぎて使いづらい。木目は大人しいほうがよい。針葉樹の場合、白太が混じらずに赤身だけで揃えると「いい材料だな」と感じる。この辺りは木材に親しんでいる実務者の共通認識だ。ただし、銘木のような個性を競うような分野になると見方が変わってくる。
田中 一方で時間が経つと赤身と白太の差はなくなってくる。最初は源平があり、節もある材料には抵抗感のある建て主もいるが、経年変化を踏まえた提案を受け入れてもらえると費用対効果も高まる。最初から上質感を狙うのであれば木又さんの言うとおりだと思う。
−木の良し悪しを学ぶにはどうすればよいのか。
田中 信頼できる材木店と付き合うことだ。当社は良材を提供してくれる橘商店やコボット、ムラモトなどと付き合いが深い。彼らは飲食業界における目利きの仲買人のような存在。私が好きそうな材料が入手できたらSNSなどで連絡してくれる。材木店と一緒に材木市場に買い付けに行くこともある。迷子になりそうな広い場所で、多種多様な木材を大きな原板で見られるので勉強になる。原板には耳が残っており、木目もよく分かるので樹種ごとの特性が掴みやすい。カットサンプルで見るのとは情報量がまるで違う。
木又 木材市場に足を運ぶと木材の性質を知ることもできる。たとえば・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー1・2月号(2023年1月30日発行)/設計施工を究める超家づくり術<高意匠×高性能編>』(P.22~)でご覧ください。
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