富士経済(東京都中央区)は2月8日、エネルギーマネジメントシステム(EMS)と関連するシステム・機器、サービスの国内市場を調査した結果を「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査2023」にまとめ発表した。エネルギー業界の最新トレンド(脱炭素、エネルギーコスト高騰、省人・省力化、運用高度化)における市場への影響など、最新動向と今後の方向性を明らかにした。
2021年度のEMS市場は、新型コロナの影響による設備投資抑制や世界的な部材供給不足により、市場規模がわずかに縮小した。2022年度は製造業での脱炭素対策の需要増加や、エネルギーコスト高騰による省エネ・再エネニーズの高まりが市場をけん引し、前年度比8.4%増の877億円の見込み。今後、中小規模事業者による導入施設の増加や、システムの高度化・高機能化による価値・導入メリット向上によって市場が拡大し、2035年度は2021年度比60.1%増の1295億円が予測される。
このうちHEMSは、脱炭素化、ZEH化促進の影響や、大手ハウスメーカーの新築戸建て住宅へのPV搭載比率上昇に伴い、採用が増加。2022年度は人件費や部材費の高騰により、HEMS搭載率が低下しているハウスメーカーもみられたが、自家消費用途でのPV販売好調を受け、付帯設備として採用割合をあげたケースもあった。サービスに関しては、無償でコンテンツサービスを展開していることが多く有償でのサービス提供は限定的だが、今後コンテンツ拡充による多様化で、有償サービスが緩やかに増えると予想。システム・サービスを合わせたHEMS市場は2021年度比7.2%増の74億円を見込む。長期的には新築着工戸数の減少が予想されるが、ZEH基準の厳格化や東京都以外でのPV設置義務化が検討されていることから、HEMS導入も進むとみられる。2035年度には、2021年度比59.4%増の110億円が予測される。
V2X(自動車用充放電器)は、住宅向けが中心で、スマートハウスなど高付加価値住宅のオプション設備や、環境・防災意識の高い層で導入が進んでいる。2018年度以降、大規模自然災害の発生に伴うBCP対策用や卒FITユーザーのPV自家消費用として市場が拡大。2022年度は、軽EVの普及に伴うニーズの拡大と補助金制度の一部緩和により、購入希望者が増加している。一部自治体では独自の補助金制度を設けるなどしており、2022年度は2021年度比48.3%増の43億円が見込まれる。今後もPV自家消費用・BCP対策用のニーズの増加や、部材不足による納期遅れの解消、新規メーカー参入などにより、2035年度は2021年度比16倍の465億円と予測する。
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