ここ数年の急激な市場環境の変化により、家づくりや経営環境は大きく変わってきている。
そうした状況の中で、地域工務店が持続可能性を高める一つの手段として、筆者は「CX」の向上が必須だと考えている。本連載「新CX論」では、住宅産業の事業環境の変化を再確認しながら、この変化に対応するために何を踏まえ何を検討すべきかについて述べていきたい。
なぜ今、改めてCXなのか
CXとは何か―。
CX(カスタマーエクスペリエンス)は「顧客体験」とも訳される。顧客が製品・サービスを購入する際の体験に限らず、購入前や購入後を含めたプロセスで生じる顧客の体験全体を顧客視点からみたものだが、ここで大事なことは「プロセス全体」での体験であり「顧客視点」でみた体験という点だ。
自社の製品・サービスが過去や他社との比較、あるいは社会の期待(性能基準など)と比べて優れたものになっているかが顧客の購入プロセスの中で重要な体験要素になることはわかりやすい。また、引き渡し後のアフターサービスの制度化なども可視化しやすい体験要素の一つだ。
一方で、顧客が顧客となる前の直接的・非直接的な接触(例えば、知らないうちに見られている広告宣伝の内容・表現や街中の施工現場の様子、電話や対面での関係者の振る舞いなど)がもたらす体験やアフターサービスが期待通りに提供されるかなどの体験要素がCXにつながる一連の取り組みであることは捉えられにくい。しかしこれも、顧客から見れば一連であり同じ会社から受けた体験なのだ。
このように目に見える価値である製品・サービスの提供に付随する目に見えない価値、言い換えれば顧客の気持ち、にまで、「一貫性」を持った「継続的」な気配りや、適切に提供していると「自負」する製品・サービスが顧客に「どう見えているか(伝わっているか)」に心配りができる企業姿勢を醸成する取り組みこそがCXとも言える。
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