注文住宅の価格高騰により、建て主から当たり前のように優れた意匠性と高い躯体性能が求められるようになっている。「注文住宅3500万円時代」には「高意匠×高性能」の住宅を安定して供給する必要がある。そのためには設計施工のルール化や体制づくりが重要になる。トップランナーの2人に自社の取り組みを中心に語ってもらった。
司会・構成・執筆:大菅力 執筆:編集部(P16-21)
岡庭建設 専務取締役
池田 浩和氏
(一社)JBN ・全国工務店協 会副会長も務める。
設計施 工の実務に明るく、住宅生 産を俯瞰して捉える視点に は定評がある
サトウ工務店 代表取締役
佐藤 高志氏
大型パネルをフル活用した意匠性に富んだ住宅で知られる。
最近、工務店を対象とした技術コンサル事業も開始
POINT1.高性能化 最高基準をベースに地域事情を加味
池田 2000年代を振り返ると、長期優良住宅の制定により法的な指標として住宅性能が見える化されたと思う。当社でも長期優良住宅以降、性能をベースに住宅のあり方を考えるようになった。外皮性能についてはZEH基準が制定されたころから意識が高まり、HEAT20の制定で目標とするUA値や仕様を定めていった。耐震等級は熊本地震を契機に等級3を絶対的な指標とした。基本的には要求性能の高まりに対して積極的に順応していこうという考え方だ。今後は水害などへの対応も大切だと考えている。
加えて2018年ごろに東京ゼロエミ住宅の制度設計のお手伝いをした。この制度の特徴は仕様規定に従うと一次エネルギー消費量で-30%を達成できるところ。一次エネルギー消費量は日射取得や設備選択などによっても変わる。外皮性能だけでなくトータルで省エネルギーを考える重要性を学んだ。
佐藤 当社でも長期優良住宅の認定制度が始まってからすぐに全棟、認定を取得するようにした。それまではむしろ意匠性を高めることに注力していた。熊本地震の半年前から耐震等級3に切り替えた。外皮に関しては2020年に大型パネルに取り組むようになって強化した。現場の大工の負担をかけずに高断熱化できるので3棟目から付加断熱を標準にした。現在はHEAT20のG3(断熱等級7)が標準だ。
−ウッドショックとインフレにより資材が高騰した。最高等級にすることでコスト負担が過大にならないか?
佐藤 同業者から過剰性能と言われることもあるが、当社のような年間6棟の小さな工務店にとって最高等級を標準にするのは差別化手法として非常に効果が高い。特に耐震等級3の実現は構造グリッドを基本にして直下率の高いプランを心掛ければよいだけなのでコストはかからない。
高性能化もあり、建設コストは上がって税込みで坪120万円程度になっている。予算調整として延べ床面積を減らすなどの工夫はしているが、資材価格の上昇分は吸収できていない。それでも受注は好調で昨年の後半から問い合わせも増えてきている。あくまで推測だが・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー1・2月号(2023年1月30日発行)/設計施工を究める超家づくり術<高意匠×高性能編>』(P.12~)でご覧ください。
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