私が調査と補修を手掛けたA邸を題材としたシリーズの最終回は、雨漏りを再発させないための補修の要点について解説する。
防水の基本は、雨仕舞を考慮して1次層、2次層と複数の防水ラインをきちんと整えること、そして万一、雨水が浸入してもすみやかに排出する仕組みを用意することだ。
【#1】築1年未満で雨漏り “ある建材”が想定外に劣化していた
【#2】【超解説】壁の内部やサッシ周辺の浸水の痕跡に着目
このシリーズで取り上げているA邸は、築1年でありながら雨漏りが生じた事例だ。連載1回目では現地調査、散水試験の手順等を紹介し、前回はこの家の雨漏りの原因が透湿防水シートの劣化であることを述べた。この家では複層の透湿防⽔シートを採用していたのだが保管状態が悪く、2カ月もの間、現場で炎天下にさらされていたのだという。その結果、防水性能が低下した状態で施工され、2次防水の役割を果たしていない状態となってしまっていた。
建て主にその旨を報告し、あらためて建物の透湿防水シートを張り替え、外装の防水処理もやり直すこととなった。補修に当たって、透湿防水シートはもともと使われていた複層ではなく、単層の透湿防⽔シートに替えた。メーカー保証10年のものより、20年のものを使うのは、私は当然のことだと考えているからだ。その分、コストは確かに高くなるが、それでも家1軒分でせいぜい3万円くらいのものだろう。
右に示したのは築8年、築12年の雨漏り事例だ。どちらも複層の透湿防水シートの劣化が見られた。築8年のほうは10年も保たずにぼろぼろになっていた。築12年のほうも、外装から浸入した雨水が通気層に浸⼊すると、防⽔機能を果たしていないシートは内部への浸⼊を⽌められない。たまたま水が室内に到達していないだけで、こうした例はもっと多いのではないかと懸念している。
浸入した水を滞留させない
A邸でも、似たようなことが起きていた。こちらの家では、通気層の胴縁は縦に取り付けられていたが、サッシと胴縁の隙間にはシーリング材が充填されていた。このシーリングにより・・・・・
この記事は新建ハウジング1月30日号 4-5面(2023年1月30日発行)に掲載しています。
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