受注制限せずとの方針で乗り切る
―木材製品価格高騰を振り返ってみて
2022年5月期当初計画は売上高200億円を目指す(2021年5月期売上高162億6900万円)ものだったが、90億円近い売上高増になった。私の40年の業界歴でも経験のないことが起きた。ただ、素直に喜べないのは私の性格的なものかもしれないが、経営者は誰でも急拡大した業績の反動を警戒する。むしろ、今後に対する課題が多数浮き彫りになったのではないか。今期も第2四半期(9~11月)までは順調に推移してきたが、第3四半期以降の受注にやや陰りが出てくるのではとみている。
当社は木材価格高騰の局面でも当社は受注制限をしないという方針を出し、既存取引先だけでなく、プレカット材を購入できず困っている新規先にも協力してきた。納期を事前に伝え、これを厳守してきた。プレカット工場を24時間3シフトで稼働させ、構造材や羽柄材については樹材種変更も精力的に提案していった。
木材製品価格高騰の過程で国産材比率が顕著に上昇した。国産材製材事業所に直接、製材品を出してくれるようお願いしたことも大きい。こうした直接調達が可能になった要因の一つに当社の関連会社であるシー・エス・マテリアルの存在がある。同社はかつて千葉県内の製材事業所を買収して設立した製材及び製材二次加工を行う会社だが、A材だけでなく取引先製材事業所が売れなくて困っているB材を積極的に買いあげ、シー・エス・マテリアルで欠点除去や二次加工を行うなどして部材開発に取り組み、取引先製材事業所との関係強化につなげることができた。
シー・エス・マテリアルではさきごろギャングリッパーを導入し、羽柄材端材を原材料にした集成間柱の量産も開始した。この取り組みをさらに発展させ、端材による「開口セット」を開発し出荷を開始した。セットごとで樹種が異なっていても問題ないことが分かった。端材を有効活用することでプレカット事業の歩留まりを高めコスト競争力にもつなげている。工務店の多くは構造部位に関しても構造強度を確保できれば必ずしも樹材種に固執することはないことにも気づかされた。
月間累計1000便の部材配送網を目指す
―目下の木材市況をどう見ているか
木材製品価格は反落に転じており、1棟あたり売上高も少しずつ下降してきた。もっとも、こうした情勢変化は織り込み済みで、短期の市況変動云々ではなく中長期的な視点で変化への対応を考えてきた。具体的にはさらなる生産性向上と歩留まりの改善、創意工夫による顧客満足度の向上に取り組み、引き続き安定した棟数の出荷を実現していく考えだ。
プレカット営業では、当社の取引先は圧倒的に地場工務店であり、営業部隊には具体的な行動計画に基づき取引先工務店訪問をこれまで以上にきめ細かく実施し、関係性を強固なものとしていくよう指示している。
また、建築物1棟当たりに占める当社の関わり度合い高めていくことを指示している。具体的には建材・住設等の取り扱い強化、建て方まで踏み込んだ提案などだ。建設業界、特に大工職人の高齢化と人手不足は深刻で、当社が自ら大工職人を育成することで取引先を支援する取り組みにも力を入れている。当社の建築請負事業、不動産賃貸事業とも連携することで今後、建て方棟数は大幅に増加するとみている。
生産性・歩留まり向上では、中期経営計画でも示したが、プレカット事業では工場の無人化に挑戦する。既に当社山武工場では邸別ピッキング用自動倉庫が稼働しており、コンピュータ制御による在庫管理技術向上に加え、必要な木材の入庫、出庫が自動化されたことで木材の適切な調達が可能となり材料費を削減するとともに生産性も向上した。特に歩留まりは10%強改善した。
物流に関しても現在のトラック保有台数20台強をさらに拡充し自社便での配送を強化していく。取引先の物流体制を学ぶ機会があり午後便を動かせるようになった。これにより月間の累計配送台数は1000台まで拡充することが可能になった。きめ細かいプレカット材配送により顧客満足度を高めるとともに、配送部門の収益性向も著しく改善された。
当社は先ごろ2025年5月期経営計画を策定し、プレカット棟数7200棟(22年5月期対比8.3%増)、プレカット坪数27万7000坪(同10.4%増)、トラック保有台数23台(同9.5%増)、建て方棟数1000棟(同62.6%増)を目指す。
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