国土交通省は1月18日、2022年度下請取引等実態調査の結果を公表した。下請負人に発注したことのある建設業者(9261業者)について、適正回答業者率(指導対象となる25の調査項目について、すべて適正な取引を行っていると回答した割合)は7.7%に止まり、昨年度の10.8%を下回った。未だ多数の建設業者が適正な取引を行っていない状況が浮き彫りになった。
調査対象は1万4000業者で、2021年7月1日~2022年6月30日の取引について、郵送による書面調査を実施した。回収率79.1%(1万1079業者)。
建設業法の遵守状況を見ると、「下請代金の決定方法」や「契約締結時期」「引渡し申出からの支払期間」などは概ね遵守されている状況。一方で、「見積提示内容」(19.2%)、「契約方法」(62.5%)、「契約条項」(43.1%)、「手形の現金化等にかかるコスト負担の協議」(38.5%)などは、適正回答率が低かった。
元請負人から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は1.4%(昨年度1.2%)。そのうち、「指値による契約」(12.6%)、「追加・変更契約の締結を拒否」 (11.8%) 、「下請代金の不払い」(11.8%)、「工事着手後に契約」(10.9%)などの回答があった。
一方、発注者(施主)から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は1.3%(昨年度0.6%)。そのうち、「発注者側の設計図面不備・不明確、設計積算ミス」(16.3%)、「発注者による理不尽な要求・地位の不当利用」(15.0%)、「追加・変更契約の締結を拒否」(13.0%)、「請負代金の不払い」(7.3%)などだった。
法定福利費に関して、下請負人に対し、法定福利費の内訳を明示した見積書の交付を働きかけている元請負人は69.3%、労務費の内訳を明示した見積書の交付を働きかけている元請負人は65.1%。また、元請負人に対し、法定福利費の内訳を明示した見積書を交付している下請負人は75.6%、労務費の内訳を明示した見積書を交付している下請負人は66.8%。
工期に関しては、下請負人から工期の変更交渉があった際に変更を認めている元請負人は90.3%。受注者の責によらない事由によって工事の完成が難しいと判断した場合、元請負人に対して工期の変更交渉を行ったことがある下請負人は82.1%。このうち「施工するために通常必要と認められる工期に変更」されたのは92.1%だった。
請負代金の額については、下請負人から変更交渉があった際に変更を認めている元請負人は94.4%。また、元請負人との契約書に「価格等の変動」「変更に基づく請負代金の額または工事内容の定め」がある下請負人は45.8%だった。額の変更交渉を行ったことがある下請負人は52.4%で、その86.0%で変更が認められた。
手形期間を60日(予定・検討中も含む)としている建設業者は76.8%。60日以内とする予定がない回答としては、「現在の手形期間が慣例となっているため」が48.1%だった。
技能労働者の賃金水準を「引き上げた」「引き上げる予定がある」と回答した建設業者は84.2%(昨年度82.8%)。理由として最も多かったのは、「周りの実勢価格が上がっており、引き上げなければ必要な労働者が確保できない」(45.3%)一方、引き上げない理由としては、「経営の先行きが不透明で引き上げに踏み切れない」(43.1%)が最も多かった。
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