国際人材協力機構(JITCO)がこのほど公表した「外国人材受入れの実務者を対象としたアンケート調査結果」によると、海外機関が日本の技能実習制度を「給料が約束通りに支払われる」「人権保護は十分」と高く評価している。その一方で、建設業など12産業分野を対象とした特定技能制度については、人権保護を含むフォロー体制が不十分だとしていることが分かった。円安・コロナ禍などで外国人材の海外への流出が問題となる中、同制度の在り方が問われている。
同調査は国内賛助会員と関係機関および海外主要送出国7カ国(ベトナム、他)の送出機関を対象に実施したもの。国内688機関、海外77機関から回答を得た。
現行の技能実習制度に対する海外機関の評価は、「高く評価」が32.5%、「おおむね良好」が63.6%と、諸外国の制度と比べて高い評価に。賃金や人権保護などの監理・監督体制に加え、「技能習得」(5評価中4.10)、「仕事の効率的な進め方の習得」(同4.19)といった教育内容に評価が集まった。帰国した実習生の仕事のクオリティが出国時よりも高くなっていることや、仕事に取り組む姿勢が模範的になったことも、同制度の評価を高める要因となっている。
特定技能制度への評価も、「高く評価」が30.8%、「おおむね良好」が42.3%と肯定的な評価が過半数に。項目別では、「労働者として制度設計をしている」(同4.06)、「日本での滞在期間を長くできる」(同4.14)などで評価を受けた。一方で、「本人の権利保護体制」(3.76)、「困難や問題の相談連絡先」(同3.58)への評価が技能実習制度と比べて低かった。
登録支援機関に人権保護の責務がなく、登録された連絡先が必ずしも正確ではないため、トラブル発生時に十分なフォローが行えないという。このために安い労働力として外国人を雇う企業や、高収入などで不法就労に勧誘する悪質なブローカーなどが発生しやすい状況となっている。
建設分野ならではの課題も
受け入れ側の国内機関では、実習生が本来の目的(技能の習得)ではなく、労働力確保の手段となっていることを自覚しつつも、両制度を「労働力不足の補完に役立っている」と評価した。特定技能の課題としては、「転職が可能で人材が定着しにくい」「(1号は)家族帯同できず生活基盤が安定しにくい」「申請・届出手続きが煩雑すぎる」などが上がっている。建設分野では「他分野にはない協議会費の負担がある」「地方整備局の審査に時間がかかる」といった意見が見られた。
両制度の見直しの必要性については、「両制度の連結性を高めて並存」(40.4%)が「現行の仕組みを維持」(32.7%)を抑えて最多となったほか、「特定技能制度を大規模に改正」が19.2%を占めた。
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