公正取引委員会(公取委)がこのほど実施した独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査結果の中で、総合工事業は発注者に対する価格転嫁の要請が最も行われていない可能性があると指摘した。
公取委では今回実施した書面調査で、「値上げ要請した受注者側」と「要請された発注者側」の回答の差に着目。差が大きい業種ほど発注者に対してエネルギーコストなどの値上げ分の価格要請が行われず、価格転嫁の要請が滞っている業種であると推測した。同調査で総合工事業は「値上げ要請した受注者」が53.5%、「要請された発注者」が87.1%。両者の差は33.7ポイントで、調査対象22業種の中で最も大きかった。次点の放送業を3.1ポイント上回っている。
一方、要請後に価格が引き上げられたかについては、「(7割以上)引き上げられた」と答えた受注者が77.6%、「引き上げた」と答えた発注者は93.4%で、その差は15.8ポイントだった。「全く引き上げが行われなかった」とした受注者は4.5%、「引き上げなかった」発注者は0.4%で、要請後の値上げについては他業種と比べると行われている。
注意喚起や事業者名の公表も
同調査はコストの上昇分の転嫁拒否事案が発生していると思われる業種を対象に実施したもの。受注者8万社(回答数3万1061社)および発注者3万社(同1万8998社)を対象に書面調査を行い、値上げ要請の有無、値上げに関する協議の実施や文書・電子メールなど記録に残る形での返答の有無などを尋ねた。書面調査で指摘を受けた事業者については公取委が立ち入り調査を行い、このうち4030社(総合工事業は149件)に対して具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付している。さらに受注者からの指摘が多く寄せられ、事業活動に影響を及ぼす事業者については事業者名を公表し、改善の命令、警告、勧告を行っている。
公取委によると、価格の引き上げを発注者側に要請できない理由として、▽次回改定時期までは改定ができない▽取引を切られる可能性があるため申し出ることが難しい▽無理だと言われた▽電話などをしてもはぐらかされる▽担当者と連絡がつかない―などがあるという。中には値上げをするとの合意を得たが取引価格は従前のままだったケースもあった。
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