2022年の住宅市場をみると、新設住宅着工戸数(1月~10月)のうち持家(新築注文住宅)は対前年比10.7%減の約21万2000戸と大幅に落ち込んだ。賃上げが不十分な経済情勢のなかで、原価高騰分の価格転嫁が進み、顧客が注文住宅よりも買いやすい分譲戸建てと中古戸建てに流れていることが、注文住宅市場が低調な一因と見られる。持家は、2022年後半も集客・受注が低調で、また経済的・施策的に大幅な着工増につながる要因が見いだせないことから、2023年前半まで低調な状態が続きそうだ。
【「住宅産業大予測2023」から抜粋・本紙編集部】
■リフォーム市場拡大、本格的な参入検討を
2023年のリフォーム市場については、矢野経済研究所が2022年に比べて微増の6.6兆円の市場規模を予測している。中古販売が堅調を維持し、そのリフォーム需要が見込めること、国が性能向上改修の補助・優遇を充実させることから、市場の拡大を期待できそうだ。
以上のことから工務店は2023年を迎えるにあたり、持家市場の低迷が継続すること、その先にも大幅な増加は見込めないことを踏まえたうえで、自社のビジョンを再考する必要がある。顧客の購買力が限界を超えると市場は縮小し、価格調整(値下げ)が必要になってくることから、客層と値付けの精度向上が求められる。同時に、リフォーム市場の拡大を見通し、本格的な参入を検討したいところだ。
■注文一本槍は難易度高い
工務店の2022年は、注文住宅・リフォーム市場の縮小に伴い利益の確保が難しく、特に注文住宅主体の工務店にとっては厳しい1年になった。2023年着工分の集客・受注も低調で、受注残が少ない工務店も多い。一方で、YouTube・Instagramでの発信手法、高性能+αの強み、DX、顧客対応+アフターなどコロナ禍でアクションを起こして勝ちパターンを確立してきた工務店は好調を維持している。工務店の集客・受注の二極化が加速しており、注文住宅一本槍経営の難易度が上がっている。
こうした足下の状況を踏まえたうえで、2023年に工務店が検討・実践したいテーマは①ストックビジネスシフト、②「不動産に強い工務店」化、③客層&商品&値付けの調整、④「安くつくるノウハウ」の構築、⑤集客・受注コストの最適化、⑥顧客対応+アフター、⑦利益の調整―の7つ。
■“2025年ショック”への備えを
また、並行して、中長期的な視点で事業規模と経営スタイルを再考することも2023年の工務店にとって主要なテーマとなる。検討すべき規模・スタイルとして、「ナノ工務店」(新築0-5棟もしくは改修・下請け)、「アーキテクトビルダー」(新築5-30棟)、「ワンストップショップ」(新築+改修+非住宅など、価格多層化&事業多角化)、「大手ビルダー」(新築100棟以上+ワンストップショップ)がある。
2025年4月から省エネ基準の適合義務化と4号特例縮小が同時にスタートする“2025年ショック”への備えも必要だ。省エネ基準の適合義務化で大きく変わるのは、建築確認時に現行省エネ基準に適合しているかの審査と完了検査が追加されること。施行日以降に建築着手する物件から、適合性審査のための書類を提出する必要があり、基準に適合しない場合、必要な手続き・書類の整備を怠った場合は、確認済証・検査証が発行されず、建物は着工・使用できない。ただし、住宅については、仕様規定を用いる場合など審査が容易な場合は、適合判定が省略される。
2023年は、国交省のホームページや木活協運営の情報サイト、国・メーカー等による講習会で最新情報を取得・理解し、そのうえで計算で適判を受けるか、仕様基準を使うかを検討、計算を内部化するか外部化するかも検討したい。外部化する場合は、設計事務所や資材流通業者、省エネのプロ等と相談して自社の性能レベルと仕様を再検討する必要がある。
4号特例とは、木造2階建てや木造の平屋など建築基準法第6条1項に該当する小規模な木造建築が「4号建築物」と区分され、建築確認の際、構造関係規定(と居室の採光・換気など)に関して審査省略制度の対象となり、構造関係規定(仕様規定)の書類を提出する必要がないというもの(都市計画区域等内に建築する場合を除く)。省略されているのは図書の提出と審査であり、それは建築士が仕様規定を計算・検討していて問題ないと確認していることを前提としている。
■耐震等級3の標準化を
4号特例が縮小されると、4号建築物という区分・名称自体がなくなり、改正第6条第1項第2号に当たる木造2階建てと木造平屋(延べ床面積200㎡以上)は「新2号建築物」とされ、全ての地域で建築確認と検査が必要となり、構造規定の審査省略制度の対象外となる。2025年以降は、仕様規定を満たすことを証明する書類を提出し、審査を受ける必要がある。
工務店としては2023年は、4号特例縮小をきっかけに自社の耐震性能とそれを実現する方法を検討し、標準化したい。理想的には許容応力度計算を内製化し、許容応力度計算による耐震等級3の標準化を目指したい。計算や申請、性能向上の内製化が難しい場合は、設計事務所やサポート機関などに依頼する体制を構築しておきたい。
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