結論から言えば、2023年は「やや厳しい」市況になると考えている。リーマンショックのような経済に大打撃を与えるようなことがない限り、急激な変化はないだろう。ただ、好材料も少なく、ネガティブな状況が継続している。
まず、原価高については一服するという見方が多いが、現状の数値は上昇し続けている。一度上げた売価を完全に元の水準にまで戻す企業も少ないだろう。結果的に、今の市況に近い状況が継続されるとみる【資料1】。
次に、住宅ローン金利の上昇だが、直近で日銀の金融緩和修正のニュースが報じられた。本原稿執筆時(12月20日時点)では、住宅ローン金利も短期プライムレートも目立った動きはなかったが、今後固定ローンに影響が出るかもしれない。金利に関しても、ここ数年よりも2023年以降のほうが、リスクがやや高いと考えられる。
最後に、家計だがこちらも好材料が少ない。物価高による家計の圧迫があるためだ。一方で、年収については大きな上昇は考えにくい状況が続いている。2023年も家計の圧迫分を大きく補う年収増がなければ、こちらも好材料にはなりにくい。
「集客格差」は拡大
市況がそれほど良くない分、個々の企業の力量が現れるとも言える。実際に、住宅会社の「集客格差」は拡大している。だからこそ、顧客の変化に柔軟に対応していくことが求められる。そのうえで押さえておきたいキーワードは以下である【資料2】。
顧客は住宅購入に失敗したくはないが、営業されたくはない。そうなれば、事前の情報収集の質を高めることで、なるべく絞った状態で展示場に行きたいとなるのは自然なことだ。
デザインの側面はInstagramを見ればわかるし、性能など説明が必要な側面はYouTubeを見ればわかる。安心感を持って来場したいから、それらの情報を提供できる会社が来場されるというシンプルな構造だ。情報探索もタイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果)が重視され、倍速視聴が当たり前のようになってきている。
一方で、すべてを自分の目で確かめるにはタイパが悪いので、信頼できる人からの紹介や口コミがより大事になってくる。企業情報の透明性が高い企業ほど、信頼が得られる構図になった。Instagramにおける購入検討客と購入済顧客(OBOG)のやりとりも増加してきているのがその証左である。事前に購入客のより具体的な評価を知りたいと思うのは必然であろう【資料3】。
この流れを総合すると、今後は、「来場前チャット相談」「デジタル(メタバース)展示場&無人モデル展示場」「ユーザーマッチング(購入客と検討客)」の方向性に進んでいくと考えている。リアル展示場での営業担当との面談はより後工程になっていくのではないだろうか。
「顧客視点の経営」を深める
より顧客から選ばれる住宅会社になるためには、顧客視点を深めることである。例えば、今すぐできることとしては、契約客、引渡し、住み心地(3年以降リアルタイム)の各種アンケートをすべて取得してみてはいかがだろうか?
リアルタイムの顧客満足度を計測することは、自社のアフターサービスを見直すきっかけになる。先の資料のとおり、顧客紹介を増加させることは必須事項であるが、そのためには、リアルタイムのCSを計測する必要がある。何度も紹介をして頂くには、ファンであり続けてもらうことが大事だからである。定期点検や保証対応だけで顧客がファンになってくれることはない。お引渡し後のお客様への価値提供を見直すタイミングにきていることがわかるはずだ。
また、失注客や購入客のユーザーインタビューによって顧客の負や良かった点を詳細にヒアリングしてみてはいかがだろうか?
アンケートでは聞ききれない内容を掘り下げることが可能である。普段どのようなアプリを使っているのか、周囲の方の意見をどのように参考にしたのか、営業のどのような言葉が信頼に繋がったのか、最後他社を選んだのは何が要因か―等々。
より混沌とする住宅業界においては原点に立ち戻ることが重要だ。顧客にとって大事なことが見えてくれば、経営者が何から取り掛かるべきかが鮮明になるはずだ。
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