7 「別注」で目利き力を表現する
こうした目利き力を分かりやすいかたちで表現したものが「別注」である。
セレクトショップやデパートなど販売力のある企業が、既存の商品の一部仕様を変更したオリジナルモデルを発注することである。企画力やデザイン力が直接問われるかたちになる。
これはそのまま工務店の取り組みとしてお勧めできる。建材の特注色やユニットバスの一部の仕様変更である。仕様変更と聞くと、ある棟数以外の工務店以外は関係なさそうだが、実はそうではない。建材・設備メーカーでは、昨今の施主の「別注」ニーズに対応し、そうしたハーフオーダー対応をしているのだが、工務店はあまり利用していないという実態がある。
こうした製品を活用して、シャワーヘッドを輸入品に交換したユニットバスや、オリジナルカラーの左官材やメラミン化粧板などを提案すればよいのである。実はかなり実現しやすい提案である。
8 独立系ブランドの可能性
このように、昨今のアパレル業界は景気低迷の波をもろに受けており、顕在化したユーザーニーズをいち早く応え、安価に商品化するという手法に集中している。そうしたなかで、デザイナーの世界観で商品企画を行う、マーケティングとは無縁の独立系のブランドも少数だが存在する。
そうしたブランドはコアなファンをもち、繁華街から少し離れた家賃の安いところに店舗を構えているのが通例である。客層が限られている分、粗利率は当然、高めである。店舗設計も名の知れた空間デザイナーの起用にこだわらず、無名でもオーナー(デザイナー)と世界観がぴったりくる空間デザイナーと二人三脚で店づくりをしている。
大変に魅力的だが、真似をするにはリスクが多いモデルである。ただし、次のトレンドは、常にこうしたマーケットインの真逆の方向から現れる。住宅もまたしかりである。ドンキホーテとなり、無人の荒野を目指すのも、またアパレルから学ぶ方法論のひとつである。
[新建ハウジングセミナー]小泉誠の家具提案×空間デザインの作法
●本記事執筆者の笈川さん、大菅さんに加え、人気家具・インテリアデザイナーの小泉誠さんにも登壇いただきます。
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