東京商工リサーチ(東京都千代田区)は12月19日、11月の「後継者難倒産」について状況調査の結果を公表した。後継者不在による「後継者難」倒産(負債1000万円以上)は、34件(前年同月比17.0%減)で、5年ぶりに前年同月を下回った。30件台にとどまったのは、2020年の39件以来2年ぶり。倒産全体の構成比は同2.2%減の5.8%だった。一方、2022年の11月までの累計は前年同期比11.1%増の389件で、2021年の年間件数381件を上回っており、初の400件台がほぼ確実となった。
産業別では、10産業のうち4産業が減少し、建設業は4件(前年同月比60.0%減)で2年連続、不動産業は1件(同66.6%減)で3年ぶりに前年同月を下回った。前年同月を上回ったのは、製造業10件(同66.6%増)、農・林・漁・鉱業1件、小売業6件の3産業。
要因別では、代表者の「体調不良」16件(前年同月比6.6%増、構成比47.0%)が最も多く、「死亡」14件(同22.2%減、同41.1%)と合わせると、これらの上位2要因で約9割(同88.2%)を占める。2要因の合計は前年同月比9.0%減と5年ぶりに下回ったが、構成比は7.8ポイント上昇した。代表者の高齢化が進み、「死亡」「体調不良」が経営上のリスクとなっている。
形態別では、「破産」が33件(前年同月比8.3%減)で2年連続下回ったが、構成比は9.2ポイント上昇し97%となった。「民事再生法」は2年ぶりに1件発生した。業績不振が続く企業では、後継者育成や事業承継の準備が後回しになりやすく、不測の事態が生じた場合に「破産」を選択するケースが大半とみられる。
資本金別では、1000万円未満が20件(前年同月比5.2%増、構成比58.8%)で約6割を占めている。1000万円以上5000万円未満(10件)が5年ぶりに前年同月を下回った一方、5000万円以上(3件)が3年ぶり、1億円以上(1件)が8年ぶりに発生した。
2021年の経営者の平均年齢が62.77歳(前年62.49歳)と高齢化が進むなか、後継者不在の企業は約6割にのぼり事業継続を困難にする要因となっている。コロナ関連支援効果の薄れから企業倒産は2022年4月から8カ月連続で前年同月を上回り、増勢局面が鮮明になっている。金融機関・一般企業において、リスクマネジメントとして代表者の年齢や後継者の有無を重視する傾向にあるが、中小・零細企業が自ら対処するには難しい段階に入っている。同社は、自治体や金融機関、商工団体などの支援とともに、事業承継に向けた経営者の意識改革と行動が必要だとしている。
同調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年11月の「後継者難」倒産(負債1000万円以上)を抽出、分析したもの。
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