こどもみらい住宅支援事業に申請できなかったので、契約をいったん解約して再契約し、こどもエコすまい住宅支援事業に申請しようと考えている工務店も少なくないようです。しかし、解約からの再契約には法的なリスクも伴います。弁護士・秋野卓生さんに、注意点を解説していただきました。解約合意書の書式も公開していますので、ご活用ください。
1、こどもみらい住宅支援事業の
交付申請・予約受付の終了
11月28日、こどもみらい住宅支援事業の新規申請が、当初想定された時期(~R5年3月頃)より早く締め切られ、それ以降は補助金を受けられなくなるという事態が生じました。
補助金を受給することを前提に請負契約を締結した施主から「すぐに交付申請の予約対応をしなかった工務店が悪い」といったクレームも寄せられている中、後継の「こどもエコすまい支援事業」の適用を受けようと考え「令和4年11月8日以前に契約締結し、令和4年12月中旬以前に着工可能であった工事請負契約を解約して再契約したいのだが、問題はないか?」という法律相談が寄せられています。
2、補助金の不正受給リスク
解約からの再契約を経て申請を行ったものの、請負契約書記載の日付を変更したのみで、新規契約を締結したものとは言えない場合は、事後的に補助金の支給を不当と認定されるリスクがあります。
こどもエコすまい支援事業では、令和4年11月8日~令和5年12月31日において工事請負契約を締結したことが要件とされ、これ以前に締結済みの契約の「変更契約」は補助金支給要件を満たさないことになります。
そのため、上記期間外に締結された契約と同一性・連続性を有し、契約日(の記載)のみの「変更契約」と評価された場合は、支給要件を満たさず、一方、元の契約とは別個・新規に成立した契約と評価された場合は、支給要件を満たすことになります。
そして「解約」(合意解除)とは、契約締結後の新たな合意により、契約による拘束力から契約当事者を解放する旨の意思表示をいい、「再契約」とは、従前の契約を終了させた上で、新たに契約を締結することをいいます。
そのため、有効な解約から再契約を経て締結された契約と言いうるためには、解約にかかる手続きがなされる必要があり、旧請負契約で受領済みの契約金があれば、当然、施主に返金するなどの措置をすべきです。 有効な解約とするための解除合意書の書式も用意していますので、参考にしてください。
3、不正受給に関する法令について
国が実施する補助金制度については、不正受給の防止等を目的とする法令として「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」があります。同法では、補助金制度を所管する各省各庁の長が、「補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか…等を調査」の上、補助金を支給するものとされ、形式的な審査のみならず、その「目的及び内容」の適正について、実質的な審査権が付与されています。
その上で、不正受給に対し、各省各庁の長は、補助金の返還を求めるとともに(同法18条)、不正受給がなされた金額に対し、年利19.5%の加算金および延滞金を請求することができ(同法19条)、その回収のために、当該事業者に対する他の補助金等を一時停止することも認められています(同法20条)。
また、不正受給に対する刑罰として、法人代表者等に対する5年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科が規定されています(同法29条1項。補助金等不正受交付罪)。ここでいう不正受給とは「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け(る)」こと等を言います。
加えて、実務上は、詐欺罪(刑法246条)でも訴追される傾向があるとされており、この場合は刑罰として、10年以下の懲役を科される可能性があります。
4、解約⇒再契約をする場合には、
架空ではなく真実に解約・再契約をしましょう
上記の通り、補助金の不正受給は、刑法犯のリスクもありますので、解約からの再契約をする場合には、架空ではなく、真実に解約・再契約をすることをアドバイスしているところです。
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