分譲、注文住宅大手であるとともに、木造軸組プレカット生産最大手であるポラス(埼玉県越谷市)のプレカット事業等を行うポラテック(同)。同社は先ごろ5カ年計画を公表、2026年度の構造材プレカット生産坪数200万坪を目指すとした。我が国の新設木造軸組住宅に占める機械プレカット比率は90%を優に超え100%近いとの指摘も聞かれ、非住宅を含め機械プレカット産業なくして木造建築はありえないのは誰もが理解する点だ。プレカット産業の現況と先行き、今後の課題や期待を同社専務取締役の北大路康信さんに聞いた。
はじめに同社の2022年3月期実績を振り返る。外販受注棟数3万7888戸(前期比2.6%減)、外販売上棟数3万5937戸(同7.7%減)となった。プレカット生産状況は、構造材生産高125万3521坪(同4.7%減)、羽柄材生産高85万6934坪(同2.6%減)、合板生産高67万4727坪(同4.1%減)。
新設木造軸組住宅着工戸数が伸び悩んだことから同社の受注、売上棟数、プレカット生産高も小幅減となったが、プレカット生産高は2番手を大きく引き離し突出した日本一だ。同社の構造材プレカット生産坪数シェアは推定11%にのぼる。現在、全国でプレカット6工場を展開している。
2023年3月期計画は、外販受注棟数4万3390戸(同14.5%増)、外販売上棟数4万3350戸(同20.6%増)。プレカット生産計画は構造材生産高153万5200坪(同22.5%増)、羽柄材生産高105万9260坪(同23.6%増)、合板生産高81万6840坪(同21.1%増)と大幅な増加を目指す。現在までのところ、ほぼ計画通りで推移しているとのことだ。
ポラテックの2022年3月期業績は売上高1007億2100万円(同26.9%増)、営業利益85億2200万円(同147.3%増)、経常利益87億7500万円(同93.0%増)、当期純利益56億500万円(同87.6%増)を計上した。木材・建材価格高騰で同社のプレカット材工価格も大幅に上昇し売上高、収益を押し上げたといえる。2023年3月期売上高は1230億円を目指す。
ウッドショックの影響はなかった
―2021年から内外産木材・建材価格が高騰し、プレカット産業にも多大な影響を及ぼしたと考えられるが、どのような影響があったか?
巷間で言われるウッドショックの影響は、当社ではなかった。内外産木材製品価格は大幅に上昇したが、かといって材料が入手できないということは一度もなかった。当社の材料在庫は常時10万立方㍍強、在庫率は大方が1カ月、長いもので2カ月。プレカット事業では一定以上の在庫を持つことはできないが、在庫が足りなくなることはなかった。
構造材等は毎月6万立方㍍強、合板は同1万5000立方㍍前後調達しているが、仕入れができなくて困ることはなかった。確かに木材調達価格の急上昇で、一時は底値に比べて2倍前後になった品目もあるが、当社だけ仕入れ価格が上昇したわけではなく、関係者全員が同じ状況だったということだ。
木材関係の仕入れは供給者との緊密な連携を強みに少数精鋭で極力人手をかけずに展開している。長年にわたる供給側との信頼関係がそうしたことを可能にしてくれていると思う。例えば合板仕入れは購買担当の女子社員1人で毎月1万5000立方㍍を安定調達できている。今は輸入木材製品に顕著だが、需給が緩和し価格も下がってきたので仕入れ担当は調達に全く困っていない。
―新設住宅需要は木造持家の伸び悩みが顕著。プレカット受注にもそうした変化が出ているのか。工務店は新築住宅受注で苦戦しているが、どのように見ているのか?
まず、当社のプレカット受注状況だが、全く悪化しておらず不況感はない。年内から来年前半までは忙しい状況が継続されるとみている。大手、中堅を問わず他のプレカット事業会社も同様に仕事は入っていると聞いている。今は私がプレカット営業担当責任者に営業数字について指導する事も全くなく、新人でもけっこう受注を獲得してくる。
持家注文住宅系が苦戦しているのは確かで、工務店ルートに限らず住宅大手でも同様の現象がみられる。ただ、当社が懇意にしている工務店からは悪いという話は聞かれない。工務店ルートは当社の最も重要な顧客であり、一軒一軒と緊密に取引させてもらっている。伸びている工務店、成長したいと考えている工務店と付き合っていくことが大切だと思う。そうした関係性を通じて当社もさらに成長していきたい。
工務店全体を俯瞰すると淘汰は避けられないことだが、当社の取引先工務店は彼らの商圏で勝っているところが多く、積極的に土地を仕込んで小規模分譲に取り組むなどしている。彼らは東京近郊であれば、今は建てれば売れる状況であることをよくわかっている。
建設業界で最大の懸念要因は深刻な人手不足だ。職人の高齢化、後継者難は全く改善されず工務店に限らず大工等の職人不足の問題はそれほど遠くない段階で経営を揺るがす問題となる。当社は長年、独自で大工職人育成のための教育機関を運営しているが、全体としては建築を教育する学校も減っているのが現状だ。
ただ、人手不足は高精度の機械プレカットを活用するという動機になる。木造軸組についても最近、フルパネル化など様々な省力化に向けた工法が登場している。当社が積極的に新工法を開発するという立場にはないが、取引先からそうした工法相談を受けたならば協力していきたい。
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