早稲田大学と旭化成ホームズはこのほど、ZEH住宅への在宅避難が可能かについて検証した実験結果を発表した。夏季の72時間停電時に熱中症リスクを低く抑えた状態で、環境維持ができることを確認している。
同実験は早稲田大学大学院、同理工学術院総合研究所、旭化成ホームズの研究グループが2020年7月23日から9月6日にかけて静岡県富士市内で実施したもの。同研究グループはこの成果をZEHのメリットとして周知することで、ZEHの普及促進に貢献できるとしている。
実験では太陽光発電4.62kW、蓄電池5.6kWhを導入したZEH実験用住宅(鉄骨造・地上2階建、延床面積約46㎡)を使用。夫婦と子ども2人の4人家族を想定して停電時の生活スケジュールを作成し、電力消費量や温熱環境を測定した。熱中症予防の観点から「エアコンの連続使用」を最優先とし、室温は起床時27℃、就寝時28℃、給湯量は家族4人分1日200リットルに設定している。
生活スケジュールは、(1)最小限の電力(リビングエアコン・照明・換気:終日使用、冷蔵庫・テレビ・携帯充電:定量使用)、(2)(1)+ヒートポンプ給湯器夜間使用、(3)(1)+同昼間使用、(4)(3)+電子レンジ、炊飯器などの高負荷家電定量使用、(5)(4)+夜間寝室のエアコン使用――の計5ケース。実験中の天候はおおむね晴天だった。
昼間の給湯器使用でリスク回避
結果、太陽光発電による電力供給が可能な「昼間に給湯器を使用」する(3)のケースで、熱中症のリスクや停電もなく、快適性を維持しながら自宅滞在できることが判明した。
一方、電子レンジ・電気ポット・炊飯器などの高負荷家電を使用したケースでは、定格電力の超過や蓄電池の充電(SOC)の枯渇が発生し、電力供給が一時的に停止している。(5)の夜間に寝室のエアコンを使用するケースでは、就寝時の快適性は得られたものの、放電によりSOCが低下したことから、翌朝以降の熱中症リスク回避が難しいと判断された。
同研究グループは「東京都では避難所の不足のため、災害時の自宅待機を可能な場合に限り推奨している。災害時に自宅で過ごすためには停電を防ぐことが重要であり、ZEHはバックアップソリューションとして有効だ」と結論付けている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。