東京商工リサーチ(TSR)は11月10日、来年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として導入される「インボイス制度」の10月末の登録率が37.1%と低迷していることを発表した。
同制度は所定の記載要件を満たした請求書などの「適格請求書(インボイス)」を発行または保存することにより、消費税の仕入額控除を受けることが可能となる。今回、国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データを、東京商工リサーチ(TSR)が独自に分析。総務省の「経済センサス」の企業数を基に、10月末の登録率を算出した。
〈おすすめ記事〉【連載】一人親方全員に「課税事業者」になってもらうべき?
全体登録数は、10月末で143万3500件を数え、10月は22万6447件と3カ月連続で月間最多を更新したが、けん引しているのは法人で、登録率は60.5%と6割を超えた。個人企業は14.9%で、個人企業の登録遅れで全体の登録率は37.1%にとどまり、フリーランスや小規模事業者への登録促進の議論が加速しそうだ。
個人企業は、売上高1000万円以下で、納税義務が免除された免税事業者が多く、国税庁の2020年度統計年報の課税事業者数で登録率を試算しても、法人(約205万件)は55.4%、個人企業(約115万件)は26.8%で、全体でも44.7%と半数に届かない。免税事業者から課税事業者への移行も考えると、個人企業の登録の低調さが際立っている。
TSRが8月1日~9日に実施した企業アンケートで、制度開始後は免税事業者と「取引しない」との回答は9.8%で、半数近くが「未定」だった。今後、「取引しない」回答は増える恐れもあると見ている。
個人企業は申請手続きだけでなく、課税事業者への移行に伴う納税義務の負担増が登録遅れにつながっているとみられる。国税庁は誰でも参加可能なオンライン説明会を開催し、周知徹底を急ぐが、個人企業は負担増への反発も大きく、新たな対応策が必要な可能性も出てきた。
また、2022年10月末の法人登録数や登録率を都道府県別で見ると、登録数トップは東京都の18万5875件だった。次いで、大阪府の9万6616件、愛知県の7万678件、神奈川県の6万21件、埼玉県の5万1541件、北海道の5万614件、福岡県の4万1643件と、大都市圏が上位を占めた。一方、最も少なかったのは鳥取県の4733件。次いで、高知県の5401件、佐賀県の5666件、島根県の6056件、徳島県の6,706件となった。
登録率は、大阪府が69.1%でトップ。前月1位だった東京都は68.4%で2位に後退し、3位は山梨県の65.9%、4位は長野県の65.1%、5位は三重県の63.8%のとなる一方、最低は、長崎県の50.8%で、秋田県51.1%、佐賀県51.5%、徳島県52.7%、神奈川県の53.2%と続いた。
【関連記事】
〈連載〉工務店が自社でインボイスを発行するには?
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。