日本ウッドデザイン協会(東京都港区)は11月9日、「ウッドデザイン賞2022」の最優秀賞4点と優秀賞、奨励賞を合わせた28点の上位賞を決定した。
今回から同協会主催となり、SDGsなど時代のニーズに合わせて審査ポイントを刷新したほか、応募分野を拡充。最優秀賞はこれまでの「農林水産大臣賞」に加え、新たに「経済産業大臣賞」「国土交通大臣賞」「環境大臣賞」を創設した。
「農林水産大臣賞」は、MEC Industry(鹿児島県姶良郡)の『MOKUWELL HOUSE』が受賞した。地域産の原木を自社で加工することで高い歩留りを実現する、地域密着型のサプライチェーン構築のビジネスモデルから生まれた木造のプレファブリック住宅。工場生産の部材を現場で組み立て、高品質と低価格を両立しながら、地域材の高付加価値化、木の魅力を味わえる空間の提供、といった複合的な課題解決への取り組みが高く評価された。
「経済産業大臣賞」は、イトーキ(東京都中央区)の『ワーカーのウェルビーングな働き方をサポートするビッグテーブル「シルタ」』が選ばれた。オフィス空間向けのビッグテーブルで、ペーパーハニカムパネルとアルミ押出材を天板内に収納して軽量化と強度を確保している。木のぬくもりはストレス軽減や集中力の向上に効果があることから、無垢の木の質感を味わえる同テーブルが、オフィスの木質化促進に貢献することが期待される。
「国土交通大臣賞」は、竹中工務店(大阪市)、ヒューリック(東京都中央区)、隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)、西白河地方森林組合(福島県白河市)、協和木材(東京都江東区)の『HULIC & New Ginza 8』が選ばれた。都市部に建つシンボル的な木造建築で、社会性や環境志向のある感度の高い客層に向け、木の持つ優しさを活かした快適で心地よい空間を提供する。木が持つ断熱性、吸湿性などの性能に加え、ぬくもりや柔らかさといった五感に訴える魅力を発信し、木材使用のメリットを最大限に引き出した。各種木造技術は今後の木造建築の拡大に寄与することが期待されており、都市における炭素固定を促すモデルの先進例として高く評価された。
「環境大臣賞」は、Sanu(東京都中央区)、ADX(福島県二本松市)、二葉測量設計事務所(静岡県牧之原市)、釜石地方森林組合(岩手県釜石市)の『SANU 2nd Home』が選ばれた。木と調和した保養滞在の魅力を訴求したサブスク型のセカンドホーム。国産材使用に加え、ペレットストーブなど自然エネルギーの使用、釘やビスを極力使わず解体しやすくした建築面の工夫も施されている。収益の一部で植林を行うなど、自然への負荷を最小化したサーキュラー型建築を実現。同建築物が増えるほど森が豊かになる環境再生型事業の良質なモデルであり、農山村地域や自然公園等への訪問を促進する点も高く評価された。
同賞は、木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための顕彰制度。8回目となる今回は応募総数330点の中から188点が「ウッドデザイン賞」に選出された。最終審査を経て、「最優秀賞」4点、「優秀賞」9点、「奨励賞」15点と、上位賞28点を選出した。審査委員長はプロジェクト・デザイナーの赤池学氏、統括審査委員は建築家の隈研吾氏がつとめた。
12月7日に環境展示会「エコプロ2022」(東京ビックサイト)にて、表彰式、記念シンポジウム・パネル展示・交流会を開催。12月7~9日は受賞作品展示を行う。
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