住宅市場が厳しさを増す今だからこそ、クレームによる“失点”は絶対に避けたい。クレームを未然に防ぐことは、自社とその家づくりに対するファン化を促進し、クチコミ・紹介受注を生み出す。本特集では、クレームをなくす工務店の顧客対応に欠かせない、コミュ力(コミュニケーション能力+説明能力)向上のポイントについて解説する。営業から契約、設計、現場、引き渡し、アフターに至るあらゆる場面で、地域で選ばれる工務店はどう対応しているのか。今回は石山工務店(北海道旭川市)の事例を紹介する。
建て主アンケートは100%回収
「満点でない理由」に対処する
石山工務店は2代目社長の石山実さんが率いるようになって大きく成長したビルダーだ。旭川エリアの住宅注文の新築着工数では13年連続でトップとなり、4000組を超えるOB顧客を抱える。石山さんが特に注力しているのがクレーム対策だ。「旭川市の人口は約33万人。ひとりのクレーマーが悪い噂を広げてしまうと、新規だけでなく紹介での受注もできなくなります。2年分の売り上げが吹き飛ぶほどのダメージを負ってしまう。これまで旭川市内には年間100棟建てる会社がいくつかありましたが、数だけ追って顧客のケアをおろそかにしていた会社はすべてなくなりました。同じ轍を踏むわけにはいかない」。
そんな石山さんがクレーム予防のために重視しているのが、引き渡し後に顧客に依頼するアンケートだ。質問内容は、担当者や施工者のマナー、提案力、施工の出来栄えなど約100項目について、5段階で評価してもらう。同社では新築と大型リフォームを合わせて、年間100件ほどの顧客全員からアンケートを回収している。未回収の顧客については、石山さんが自ら回収に出向き、対応する。「クレームを言う顧客は、改善を期待しているということ。何も言ってこない顧客こそ注意を払うべき。協力的でない顧客を放置していては、クレーマー予備軍になりかねない」というのがその理由だ。
回収したアンケートは石山さんが全て目を通し、コメントを書き込む。5段階評価で4以下は不合格とみなす。「顧客から99点という評価を受けても、まだ1点分の不満足がある。そこを見逃すと、のちのちクレームに育ってしまう」ということで営業担当者にヒアリングし、可能であればあらためて建て主に話を聞き、不満や不安など「クレームの芽」を探る。
逆にすべての項目が満点だった場合は、担当社員に報奨金を渡す。パーフェクトの達成率は2割ほど。建て主から高い評価をもらえれば報われるということで、社員のモチベーションを高める結果につながっているという。「クレーム予防は社員のストレスを軽減し、楽しく仕事してもらう為にも重要なことだ」(石山さん)。
クレームを顧客対応の改善に利用
「逃げない」姿勢をアピールする
アンケートはその後、担当者が各自の見解を書き込んで社内で回覧する。成功、失敗の体験を社員全員で共有するのが狙いだ。
アンケートからピックアップされたクレームについては・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー11月号(2022年10月30日発行)/超コミュ力 無敵の顧客対応術』(P.22~)でご覧ください。
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