TOTO(福岡県北九州市)は、スーパーコンピュータ「富岳」を利用して実施した研究「微細気泡および飛沫を含む気液二相流シミュレーションの住宅設備機器適用」で、「HPCI利用研究課題優秀成果賞」を受賞したと発表した。
同研究は、衛生陶器以外の水まわり商品の開発に高精度流体シミュレーションを適用させる目的で実施したもの。同社の独自ソフトを「富岳」に最適化させるなどにより、衛生陶器を大きく上回る計算量が必要なシャワーなどの水栓金具からの吐水や、浴室床の水はけのシミュレーションが、現実的な計算時間で実施できることが実証できたという。
これまで、吐水する穴の直径が小さいシャワーノズルのような製品における水流を精度よくシミュレーションするためには、民間企業が通常使える計算環境では計算パワーが足りず、実行しても商品開発において非現実的な時間が必要となるため、事実上不可能だった。しかし今回「富岳」の計算環境を利用することで、約1億5000万メッシュ、約30万タイムステップの気液二相流(水と空気が混在する流体)シミュレーションが、1週間以内程度の実用的な時間で実施でき、その結果、オーバーヘッドシャワーの内部に水が流入し、ノズルからシャワー水流が出て、止水後に残った水がポタポタと落下する様子まで再現できた。
また、浴室床表面における排水性のシミュレーション技術の研究では、1ミリ以下レベルの溝形状が数十センチ範囲でレイアウトされた床表面における流体シミュレーション技術の確立を試みた。その結果、床表面の薄い水膜が最初は床の傾斜に従って流れ、残った水は溝へ引き込まれることで流れていく様子を再現することができた。今後、同社のユニットバスルームに搭載している「カラリ床」との比較などでシミュレーション結果の妥当性の検証を進め、より効果的な溝形状やレイアウトなどの開発に活用できる解析技術へと高めていくという。
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