住宅市場が厳しさを増す今だからこそ、クレームによる“失点”は絶対に避けたい。クレームを未然に防ぐことは、自社とその家づくりに対するファン化を促進し、クチコミ・紹介受注を生み出す。本特集では、クレームをなくす工務店の顧客対応に欠かせない、コミュ力(コミュニケーション能力+説明能力)向上のポイントについて解説する。営業から契約、設計、現場、引き渡し、アフターに至るあらゆる場面で、地域で選ばれる工務店はどう対応しているのか。今回は高垣工務店(和歌山県田辺市)を紹介する。
役割分担してチームで接客
社員個人にかかる負荷軽減
高垣工務店のウェブサイトは、家の写真よりも社員と建て主の写真のほうが多い。「お客様にしてみれば建物の設備や性能がいいのは当たり前。そこを訴求しても意味がない。お客様は、担当者の提案や考え方を評価して契約するものだ」という社長の石山登啓さんの考えによるものだ。
同社の転機となったのは2008年。創業者である以前の社長が病気で倒れたときだ。復帰のめどが立たず社長不在のまま、会社を続けていくために、当時は営業担当だった石山さんをはじめ社員は団結。「社長が引っ張る会社」から「社長が不在でも運営できる会社」へと体制づくりが進められていった。「お客様が気になるのは、“ 家がもつか ” よりも “ この会社がもつか ” ということ。今後について社内で話し合い、社長が誰であろうと継続していける会社にしようという結論に至りました」と石山さん。
そこで石山さんが提案したのが、戦隊ヒーローもののテレビ番組からヒントを得た「ゴレンジャー理論」。「社長に頼れないなら、社員全員でお客様に対応しよう」ということで、「打ち合わせをリードするアカレンジャー」、「冷静にプロの意見を伝えるアオレンジャー」、「お客様の意欲を盛り上げるキレンジャー」、「自然体のミドレンジャー」、「お客様の気持ちを和ませるモモレンジャー」と社員にキャラクターを割り振り、チームで顧客との打ち合わせにのぞむことに。
「家づくりに取り組むお客様は、仕事や家事に追われる毎日の中で大変負担が大きいもの。当社では社員がチームでサポートして、その負担を少しでも軽くしたいと考えています。家づくりを通じて築かれるこうした人間関係こそ、私たちがお客様に提供できる一番のサービス」と石山さん。チームで顧客対応することで、社員個人にかかる負担も大きく軽減される。お互いの役割を分担することで、業務も明確になり、精神的な余裕が生まれ、ミスが生じにくくなった。
それでも生じるクレームのことを同社では「期待の声」と呼ぶ。毎週月曜日には、社員全員でミーティングを開き、寄せられた「期待の声」を共有。どこまでケアすればよいのかゴールを定め、担当者による対応の進捗を全員で見守り、アドバイスをする。「クレームはひとりで対応すると、精神的な余裕を失って、まずい対応や失言を重ねたりするもの。経緯を会社全体でフォローしていくことでケースごとの予防策や対応の手順などを社員全員で学ぶことができます」(石山さん)
進行状況を全員で把握
現場管理には大工も参加
建て主と社員との間で円滑なコミュニケーションを営むため、同社ではお互いの自尊心を育むことを重視。そこで週に 1 回、ひとりの社員に対して・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー11月号(2022年10月30日発行)/超コミュ力 無敵の顧客対応術』(P.14~)でご覧ください。
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