新建ハウジングは10月30日号に発行するタブロイドで、新連載「雨漏りしない家にする新・常識」を開始する。筆者である第一浜名建装(静岡県浜松市)社長の久保田仁司さんは、雨漏りの調査・修理に20年以上携わってきた。連載ではその豊富な実地経験から、ケースごとに調査の勘所、施工の要点、修理の配慮などについて解説する。連載開始にあたって、久保田さんの雨漏り修理に対する方針や住宅業界に対する提言などを聞いた。
多岐に渡る雨漏りの原因に悩む
私はもともと親の営む塗装業を受け継ぐ形でこの業界に入った。住宅会社からの下請け仕事が中心で、一方的に「一式いくら」で発注され、その範囲内で仕事をおさめる経験もしてきた。雨漏り事故の多くが、こうした旧来の現場の仕組みに基づくものであることをいまだに感じ続けているのが正直なところだ。
私が雨漏りに関わることになったのも、そうした住宅会社の現場だった。その住宅会社は高い確率で雨漏りを発生させていたのだが、たまたま私がその現場を目にし、関係者とも話をする機会があった。当時はさして建築に関する知識もないのにただただ漠然と「あそこから浸水したのかな」などと口にしたところ、のちにその箇所が「偶然当たっていた」ということから、その住宅会社からも相談が来るようになった。
こんな理由から雨漏り修理に関わることが増えていった。しかし、「雨漏りを起こさないようにするには」という私に対して、「とりあえず雨漏りがおさまればよい」という住宅会社との間で意識や意見の相違があり、この住宅会社との付き合いは終了することに。
そこで当時、まだ珍しかったホームページを作成して、雨漏り修理について、また住宅を長持ちさせることについて、自分の考えをまとめてアップしたのが2000年のことだった。これをきっかけに当時存在していた雨漏り相談サイトの管理者と連携をとるようになり、技術面の意見交換などを通じ、日本における雨漏りの現状を知るようになっていった。
当時、この雨漏り相談サイトに書き込む業者は多岐にわたっていた。私のような塗装業者のほか、屋根施工業者、サイディング業者、左官、防水施工業者、瓦葺きの職人、板金職など、外装に関わる者のほとんどといってもいい。ただ、意見や考えはそれぞれ自分の職域の範囲にとどまることが多く、原因の調査や対処もまちまち。一方で何度、補修しても雨漏りが止まらないという相談も、施主だけでなくそうした業者からも数多く受けてきた。
私も経験と研鑽を重ねてきた今ならわかる。雨漏りには必ず原因がある。しかし、その原因はひとつではないことが多く、「なぜ雨漏りが起きているのか」を究明するためには、建物全体に関わる知識が必要になるのだ。
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