社会課題の解決を自社の経営に重ねる
相羽:安成さんがすごいのは、脱炭素みたいな社会問題を自社の経営に重ねられること。
社会課題の解決ってすごく大事だし、僕らが地域工務店をやっている1つの理由って、何かの課題解決につなげていく、もっと言えば世の中を少しでも変えたいみたいなことがあるんだとは思います。でも、多くの工務店は自社の課題解決で精一杯かもしれない。
僕自身は、自分が社長をやるようになって、社会課題までは行けないけれど、地域の課題解決ぐらいまでは取り組めたらいいなと思って、会社でも「地域に帰ろう」とか「地域とどう関わっていくか、地域沸かし」みたいなこと言いながら、この10数年やってきました。
安成さんの話を聞いて、地域の課題解決から1歩飛び出て、社会課題の解決に踏み込めればいいかなと思います。まずは地域が変わることで社会が変わっていくみたいな取り組み方ができたらなと。
地球の会の会員工務店にもそう考えている社長って多いような気がするし、分科会や委員会でもそういう取り組みがテーマになることは多い。地域と社会は全然違う話ではなくて、繋がってはいる話ではあるとは思ってます。
三浦:今の話は「三方よし」のフレームで考えるとわかりやすいと思いました。三方よしの「自分よし」っていうのが会社課題で追われてるって話です。そこから先、「地域よし」とか「社会よし」とかにどうやって広げていけるかっていう話ですよね。
安成社長の話がすごく面白いのは、社会課題を解決する存在になること自体が地域工務店が支持され、顧客にも貢献し、工業化住宅・量産住宅会社との差別化になる生き方だということです。ここをてらいなく追求できるのが地球の会のいいところではないでしょうか。会社課題の解決、どうやったら儲かりますか、どうやったら集客できますかっていう話に特化しているネットワークが大半のなかではなおさらです。
また、相羽さんが言ったように、地域課題の解決は社会の課題解決に繋がると思うんだけど、脱炭素を含めた大きな視点=ビッグビジョンを持てること自体が地域工務店の存在価値とか意義になるのかなというのが、安成社長の話を聞いた僕なりの感想で、僕がずっと考えていることでもあります。
大野さんいかがでしょう?
大野:私は地球の会が居心地良いなと思うことが結構あって。それって何でかなって考えると、大野建設も115年前に1人の大工が創業して以来ずっと地域のために役に立とうとか、地域のよりどころになれみたいな思いでやってきて、理念で言うと社会貢献を目指してきた会社です。
地球の会ってもともと「NPO法人環境共棲住宅」って銘打っているわけですけども、「環境共棲」の環境っていうのは脱炭素や地域を含めて環境だし、環境と共棲する住宅っていうのはまさに地域型の自然素材の木の家を大工の手仕事でつくるということで、それ自体が保守本流、王道なんだろうなと思います。
当社も含め、工務店が地域に土着してるというか、地域で求められ必要とされてるってことは、社会性、社会貢献ともつながっているということではないでしょうか。大手よりもリアルで求められ必要とされているのはそんな地域工務店なんじゃないのかなって思っています。
地域工務店が地元の社会活動を担う存在だとすれば、地球の会はその連合体としてもっと大きな社会貢献ができるかもしれない。脱炭素はその1つですし、当社の課題と重ねねて言えば大工育成、さらには若者をどう住宅産業に引き寄せるかかといった課題解決も会としてできるかもしれない。
王道の経営を目指してきた当社と、地球の会が目指す環境共棲というビジョンは重なりますし、とても勉強になるので、私なんかはすごく居心地がいいのだと思います。
ステージに上がろう、出番ですよ、と言われている
三浦:まとめていくと、本日のこのミーティングのテーマの1つ、足下のピンチみたいな話は原価上昇と消費者の様子見を含めた動向でした。
逆にチャンスもあって、それは地域工務店が保守本流の家づくり・地域工務店としての王道の経営を再整理し追求すること自体が、実は脱炭素をはじめ様々な変化の中で社会から必要とされることであり、実はそれがある意味最大の差別化になる、と。
会社課題の共有やその手法を考えるのも大事だけど、保守本流と王道の追求が生き残りと直結し始めてるので、要するにブレずにそこを行こうぜ、そこにチャンスがあるという話かなと思いました。
安成:結局グローバルかローカルかっていうテーマの答えとしてローカリズムに立ち帰るべきなんだってことが、様々な世界や社会の出来事を見てわかったわけじゃないですか。
住宅で言えば工業化住宅ではなくて、地域のもので地域の人たちがつくるべきなんだっていうことが、いろんな意味で正しそうだっていうことが再確認されている。
私たちはずっと前からそれが正しいと思ってやってきたわけですけど、やっと世の中に認めていただけるような環境になった。
地域工務店全体が、さあステージに上がりましょう、いまが出番ですよって社会から言われてるわけですよ。まだその声は聞こえにくいかもしれないけど、きちんと受け止めて、その追い風をうける最大限の帆を張るべきだと思います。
三浦:今は社会から押し上げられてる。そこに気づいてそれを追い風にできるかどうかですね。
ここまで地域工務店全体のピンチとチャンスについて議論してきて、一定の方向は示せたのかなと思います。11月15日の地球の会のサミットでは、個社が「自分らしく生き残る」ためのヒントを、たくさんの会員工務店さん、それも社長さんだけでなく実務者からも提供して頂きます。私も当日お手伝いしますので、ぜひご参加下さい。
本日はありがとうございました。
開催日時:2022年11月15日(火)10:00~17:00
開催方法:Zoomウェビナー(完全オンライン)
参加費用:①会員/1口10,000円(視聴デバイス×2台)②一般/5,000円(同無制限)
申込方法:こちらをクリック(申込フォームに飛びます)
お問い合わせ:NPO法人環境共棲住宅「地球の会」TEL 06-6292-8121
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。