インボイス制度(適格請求書等保存方式)が2023年10月1日からスタートします。買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要なります。一方、売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付する必要があります。工務店や建設会社などの地場の中小企業に特化した支援を手掛ける税理士法人ブラザシップ代表の松原潤さんは「工務店が検討すべきことは大きく3つある」と述べます。具体的な対応策について解説してもらいました。【解説:税理士法人ブラザシップ 松原潤、渡邉美沙子】
今回の記事では、①~③の中でも特に早急な対応が必要となる「①一人親方などの免税事業者への対応」について解説します。
①一人親方などの免税事業者への対応
②自社でインボイスを発行するための準備
③制度開始後の収益予測や資金繰りの手当て
インボイス制度が始まると、1人親方など消費税の免税事業者に支払う消費税は、消費税の納付時に控除できなくなるため、工務店側の税額負担が増えます。
2022年10月10日付の新建ハウジング(2面)の記事の中で、工務店経営への具体的な影響金額について述べました。以下、記事より抜粋します。
”例えば、税抜2500万円の新築工事10棟で、年間売上2. 5億円の工務店を想定しよう。年間の仕入・外注費が税抜2億円で、そのうち15%(3000万円)が一人親方など免税事業者への支払だとすると、インボイス制度開始後は、免税事業者への支払に関わる消費税300万円分が、消費税の納付時に控除できず、工務店側の負担となる。実際には経過措置期間があるため、最初の3年間は年間60万円の負担増、次の3年間は年間150万円の負担増、そして、経過措置期間終了後は年間300万円の負担増となる。”
こうしたシミュレーション結果を考えると、工務店としては、インボイス制度が始まる前に、免税事業者に課税事業者になって欲しいところでしょう。しかし、実際には、「そんなことを伝えたら、一人親方は廃業してしまうか、よそへ行ってしまう」という声も聞きます。
インボイス制度開始に合わせて、一人親方などの免税事業者に課税事業者への移行を促す場合、その申請期限は2023年3月31日であり、あと半年しかありません。免税事業者の多くが、未だにインボイス制度をよく理解していない中、工務店は免税事業者にどのようにアナウンスし、対応を求めるべきでしょうか。
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