ファックスでの連絡や紙のカタログなど、アナログな手段が根強く残る住宅業界。事務所に戻らないと仕事が進まない、と悩む方も多いはずだ。一人の社員が複数の業務を兼任していると、負担はさらに増えるばかり。凸版印刷(東京都台東区)は、工務店の日常業務を効率化することに特化したスマホアプリ「棟梁の目利き」を開発。開発担当者の門田晋一さんに、開発の経緯や機能についてインタビューした。
兼任と電話・ファックスが工務店を疲弊させる原因
在来工法の約4割を供給しているのは、年間20棟未満の小規模工務店。社員数は2人~多くて10人、リフォームの比重が大きいという傾向があるという。また、慢性的な人手不足により、営業専任者がいないことから「営業から提案書の作成、見積もり、資材の手配、現場管理、不具合対応に至るまで一人の担当者が兼任しているケースも多く、業務の集中や属人化といった課題がある」と門田さんは分析する。
また、工務店へのヒアリングを行う中で、契約前に行う業務が極めて多いことが分かったという。工事の規模に関わらず、契約前に顧客の話を聞いて現調に行き、カタログを見て建材を調べ、時にはサンプル請求業務が必要になる。ヒアリングを通じて工務店はこのような業務に、1日2~3時間程度は費やしていることが分かった。月に換算すると40時間にものぼる。
さらに、建材店(二次卸)から建材や設備機器のカタログを取り寄せたり、見積もりを取ったりする際のコミュニケーション手段は、電話やファックスが主流。ちょっとした確認でも時間を要するうえに、品番ミスなども発生しやすい。
「ヒアリングから見えてきたこのような課題に着目し、働き方改革に貢献したいと考えたことが、棟梁の目利きを開発したきっかけ」だと話す。
選択するだけで簡単にミスなく品番出力
「棟梁の目利き」は、デジタルカタログに、工務店から建材店への問い合わせや見積もり依頼、サンプル等の請求といったコミュニケーション機能を備えたアプリだ。
カタログ機能として、メーカー品番を独自開発のデータベースで自動的に生成することが可能。カタログ上で建材を選択するだけで、品番が自動で生成されるうえに、セット品やオプション、禁則(不可能な組み合わせ)も全て網羅しているため、限りなくミスを減らすことができる。
紙のカタログと同じ製品画像を使用しているため、直感的に使いこなすことができるのも嬉しいポイントだ。
現時点(2022年10月)で、木製建具や間仕切、造作材、床材、玄関収納、システムキッチンなどを中心に、6社の主要製品中心に520品目について、ほぼすべてのオプション(色、サイズ、加工、付属品)を網羅している。その他、トイレ、玄関ドアやリフォーム商品も収録を進めている。価格改定や改廃版も随時反映しているので、うっかり旧価格や廃盤品を提案してしまうことも防げるという。
見積もり依頼・サンプル請求がワンタップで完了
カタログ機能を、さらに生かしたのが「現場部材リスト」だ。カタログ上で選んだ建材を、現場ごとに登録でき、建材店へのサンプル請求や見積もり依頼まで一通りできる便利な機能となっている。
建材店への連絡はファックス(インターネットを利用したファックス機能を搭載している)とメール、どちらにも対応している。書式のテンプレートがあるため、毎回文章を入力する手間もない。
登録した建材で、簡単な提案書を作成できる機能も10月中に追加予定。コンビニのネットプリントを利用すれば、わざわざ事務所に戻ってパソコンを立ち上げたりせずに提出用資料が作成できる。
また、現場ごとの打ち合わせのメモや写真、図面などのファイル添付機能も実装している。利用料は月額2400円(税抜)で、3人まで使用可能。4人目からは1人当たり800円(税抜)でID追加が可能。専用サイトで申し込むと、パスワードが発行されるので、後はアプリをダウンロードすれば、その日からすぐに使うことができる。
業務効率を高めつつ将来のための財産をつくる
複数の業務を抱え、夜遅くまで事務所で残業している工務店の仕事を、手軽なスマホアプリで支援したい――そんな思いから生まれた「棟梁の目利き」は、電話やファックスが当たり前になっている工務店にこそ使ってほしい。DX 化することで、業務の時短はもちろん、社内や建材店と情報共有により、コミュニケーションがより円滑になるはずだ。
また、現場部材リストが、「顧客リスト」としての役割を発揮することにも期待してほしいと門田さんは話す。
「どの建材を使ってどんな工事をしたのかを、現場部材リストでデータを蓄積することは、アフターフォローにも活用できる。また、今後代替わりをしても顧客情報という財産をつくっていく手段として、棟梁の目利きは皆様のお役に立てると確信している」
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