ローン付けは住宅営業に必須のスキル――そう思っている人も少なくないはずだ。
しかし、家づくりと住宅ローンを取り巻く状況は、一昔前から激変しており、営業マンの負担は増え、提案も大変困難になっている。工務店にとってのローン業務はどうあるべきか、iYellの石川仁健さんに話を聞いた。
ネット普及・価格上昇・多様化がローン業務を困難に
住宅ローン業務の難易度が大きく上昇している外的要因は3つ。1つ目はインターネットによる情報収集の普及だ。あらゆる世代が、日常的にネットを情報収集に利用している。家づくりの過程においても、住宅ローンの金利情報はネットで調べる情報の上位に来ている。
2つ目は住宅の価格上昇。マンションは以前から上昇傾向にあったが、最近では資材ショックのあおりを受け、あらゆるタイプの住宅が値上がりしている。一方で世帯所得は横ばいで推移しており、相対的に住宅ローンの審査を通りにくくなり人が増えている。
そして3つ目は、住宅ローン商品の多様化だ。金融機関、金利プラン、団信、キャンペーンなどを掛け合わせるとその数は 1万を超えている。目の前の顧客に最適な商品を提案したいと思っても、選択肢は複雑になっていくばかり。他社の商品であるローンを、わざわざ調べる手間も、決して小さくはない。
業務の4分の1がローン関連 追いつめられる営業マン
住宅会社の課題としては、業務の属人化やアナログな手続きの非効率さ、そして提案数の少なさなどが挙げられる。顧客に提案する金融機関が1行のみ、という会社は3割を超えており、5行以上提案している会社はほぼ皆無。ネットで金利などの情報を得ている顧客からすれば、より条件の良いローンを提案してくれない、と満足度が下がる可能性さえある。
金利の安さで人気が高まっているネットバンクも、契約する本人(住宅会社の顧客)が直接申し込むフローになっているので、営業マンからすれば使いづらい。ニーズがあるのに、おいそれとは薦められないジレンマが発生する。
石川さんは、この状況下で「営業マンがローン業務を抱え込むこと自体に無理がある」という。営業マンの業務に占める住宅ローン業務の割合は、既に25%に達しているが、契約のためにやらざるを得ない。現場を離れた経営者や管理職が、この10年間のローン業務の劇的な変化を把握しておらず、現場にばかりしわ寄せが行っているのが現状だ。
専門家が負担を肩代わりする「いえーる ダンドリ」
工務店・住宅会社が抱えるローン業務の課題を解決するのが「いえーるダンドリ」だ。顧客と金融機関をつなぐ役目を、工務店に代わって住宅ローンの専門家であるiYellが担う。住宅ローン業務のアウトソーシング(外注)、とも言える。
月1000件以上を扱う同社は、地銀からネットバンクまで、あらゆる金融機関・住宅ローンの情報を蓄積しているのが、専門家ならではの強み。3行を提案するにしても「特に理由もなくあげた3行」と「厳選した3行」では、どちらが説得力があるかは一目瞭然だろう。顧客に提案する前の「予習」も、専門家から情報提供を受けられるので、負担はほぼなくなる。
また、工務店ならではの要素としては、土地購入や中間金の支払いに必要なつなぎ融資の存在がある。ネットバンクだとつなぎ融資がなく、信販会社も中小企業では使えない。いえーる ダンドリ導入工務店なら、どのローンでもオリジナルのつなぎ融資が利用できる。これも住宅ローン専門だからこそのサービスだ。
営業マンはローン業務より選ばれるための業務に力を入れよ
ローン業務を手放すことに抵抗を覚えたり、知識不足を危惧する営業マンもいるかもしれない。もちろん石川さんも、住宅ローンに関する一定の知識は必要だという。
ただ「細かすぎる知識は不要」とも。顧客や不動産の条件を見て、審査上、懸念がある要素を判断できる程度の知識があれば、営業マンとしては十分。金利、返済額、特徴の説明など比較検討のサポートや、その後の手続きの案内は、同社のような外部の専門家に任せる。
石川さんはむしろ、アウトソーシングでできた余裕を「選ばれるため、生き残るための行動に充てるべき」と話す。ローン業務に忙殺されたせいで顧客をフォローできず、失注してしまえば元も子もない。営業マン本来の、受注獲得に時間を費やすべきで、そのためにアウトソーシングは有効な手段となる。
専門家との提携が工務店の質を高める
いえーる ダンドリを導入した工務店でも、当初は抵抗や反対だった会社もある。長野県のある工務店は「営業が弱くなる」との声が挙がったが、それを振り切って導入。今では逆に「提案の質が上がった」と好評を得ている。
社会や生活者の変化は、よりハイスペックな住宅を要求する。営業マンが覚えるべき、説明しなくてはならない事項は、今後ますます増えていくはずだ。今のままローン業務を抱えていては負担が大きくなる一方だし、顧客の厳しい視線は、ローン提案にも注がれる。
ローン業務のアウトソーシングは「住宅ローンの専門家と提携している」と捉えそれを顧客にアピールしてほしい、と石川さん。家づくりを突き詰めるためにも、負担の大きな住宅ローン業務の見直しを検討してみてはどうだろうか。
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