LIFULL(東京都千代田区)は10月12日、空き家となっている築古の別荘をデジタル技術により再生し、貸別荘とすることで不動産のバリューアップを図るプロジェクトの実証実験を開始したと発表した。
プロジェクトの第1弾として、VUILD(ヴィルド、神奈川県川崎市)と共同で組み立て式のサウナユニットを開発。VUILDが導入する木材の3D加工機「ShopBot」により、設計データ通りに切り出した部材をユニット化し、組み立て式にすることで現場での作業手順を削減したほか、ユニットに断熱材を組み込んで高い断熱性を実現した。木材は栃木県産の杉材を使用。3D加工機「ShopBot」は、木材をデータ通りにデジタル加工できるため、複雑な曲線でもそのまま切り出すことができるという。これにより、地域でのデジタル加工、地産地消が可能となり、建設時の輸送距離を短縮してCO2排出量削減につなげる。今後は、自律分散型の生産ネットワークの活用により、地域での地域木材の活用を推進するとともに、今回のプロトタイプを皮切りに商品化を目指し、「世界に一つだけのサウナ」を実現するとしている。
今回、サウナユニットは、既存建物のウッドデッキを増床して設置した。リビングと外部空間がサウナでつながり、より豊かに自然を感じられる体験を創出する。10月25日から栃木県那須町で、プライベートサウナ付き貸別荘「rinne(リンネ)」として運営を開始する。「自然の中での循環」をコンセプトに、都市に暮らしながらも自然を満喫できる、自分だけのライフスタイルを叶えるセカンドリビングを提供する。宿泊予約はこちら。
国内には約38万戸の別荘があるが、老朽化等で空き家になっているケースが多く、不動産価値の低下につながるとして地域課題の一因となっている。コロナ禍以降、「自然の中や、プライベート空間で気兼ねなく過ごしたい」というニーズが高まっているものの、手が届きやすい価格の中古別荘は、リノベーションの必要があるなど利用するにはハードルが高かった。今回の取り組みでは、LIFULLが別荘物件の選定・購入・リノベーションを実施。プライベートサウナを付帯させることで付加価値を高め、宿泊施設として再生する。
同プロジェクトの物件のリノベーションはa-tech(エーテック、東京都目黒区)が担当。3Dスキャンによる現況データを用いて、遠隔での打ち合わせや見積作成など設計・施工のプロセスを効率化する実証実験を行った。貸別荘の運営および販促活動は、別荘地「那須ハイランド」の販売・管理実績がある協業パートナー、日本テーマパーク開発(東京都千代田区)のグループ会社である藤和那須リゾート(栃木県那須郡)が担当する。
同プロジェクトで、新たなコンセプト、テクノロジーの活用による遊休不動産の活性化を促進し、地域社会のサステナビリティ向上と多拠点ライフスタイルを実現するモデルを創出することで、長期的には他地域への横展開を目指す。同貸別荘の運営中は実証実験の場として、エネルギーなどのオフグリッド化を目指した技術の導入、ドローン配送、ホームIOTなど、別荘地の利便性・快適性を向上する技術の導入を展開する。実証実験終了後は、中古別荘として販売。物件オーナーは、利用しない期間、貸別荘として運用することで収益を得ることができる。
同社は同プロジェクトを通して、生産性向上に関する技術開発と実用化に向けた取り組みを進め、別荘に「泊まる」「買う」「貸す」が可能な仕組みを提供し、別荘のイメージや利用価値を再定義するとしている。
今後、SOMPO Light Vortex(東京都新宿区)と共同し、スマートホーム設備を用いた新しい居住体験「SMACOYA(スマコヤ)」を提供予定。
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