止まらない円安とインフレによる資材高騰。その対策の1つが材料の種類を絞り、多用途に活用すること。材料を国産材などの「ムク材」に特化。省コストと差別化を同時に実現する手法について、山梨県の天野保建築の天野洋平氏に聞いた。
ポイント①余っても困らない材で仕様を組む
◉資材高騰により、原料や部品を海外に頼る建材・設備は供給や価格が不安定化。建て主の要望や流行に合わせて既製品をあれこれ入れ替える、従来の家づくりは経営上のリスクとなる
◉価格や流通が安定した既製品は限られているため、各社の仕様は似てくる。自社の特徴を建材や設備で表現するのは難しくなる。また既製品に頼ると流通量が減ったり値上げをするたびに仕様を見直す必要がある
◉既製品ではなく、加工可能な「材料」を主軸にすれば流通や価格に一喜一憂せずに済む。それが価格と供給が安定した「ムク材」の活用だ。特に国産材は原料も加工も国内で完結。多用途に使える
➡上記は住宅産業が材料調達や材料加工の能力を重視する、伝統的な建設業の価値観に回帰するということを意味する
◉その流れを踏まえて天野氏は国産材をはじめとした多用途に使える材料で仕様を組み立てている。いずれも同じ品質のものが安定して入手でき、余っても用途に困らない材料だ
➡ 天野氏は大工棟梁でもあり、下小屋で材料を加工することもできる。国産材などの「ムク」の材料に特化することでその強みが生きる
ポイント②「構造美」を追求して造作と仕上げを簡略化
◉上記の仕様の考えを具現化する根幹が構造美を見せること。積極的に床組や小屋組みをあらわし、真壁主体で柱も見せる。構造を意匠とすることで仕上げ材は最低限の種類で済む
◉真壁の美しさは軸組の精度で決まる。それには基礎天端の精度が不可欠。天野氏は基礎天端を±1㎜に指定。さらに大型パネルの建て方時に適宜建て入れ直しを行っている
◉天野氏は全棟大型パネルを採用。過去の経験より1階は建て入れ直しが可能だが2階は難しいことをよく知っている。基礎と1階部分で躯体の精度を保つことに注意を払っている
◉真壁は室内建具の枠が不要なのも利点。コストを抑えられる。一方で和の雰囲気に転ぶおそれがある。和室に付き物の廻り縁や長押を省略。構造美として簡潔な空間にするとよい
◉和の雰囲気を和らげるには、2階を勾配天井として上部を吹き抜けにする。開放感が強調されると現代的な印象となる。天井に小幅板風の木板を張るなど表情に変化を付けるのも有効だ
◉軸組あらわしの場合、構造材は化粧材でもある。天野氏は美観の点からスギを選ぶ。最近はベイマツとスギの平角材の価格差も僅か。オールスギ仕様でも大きなコスト増にはならない
ポイント③品質の安定した山長材を主軸に
◉構造材は山長商店から購入。品質を高く評価している。土台はヒノキ、柱と梁はスギだ。同社には特一上小節という特一と上小節の間の独自の化粧等級がある。それも山長商店を評価する理由だ
◉特一上小の品質は・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー10月号(2022年9月30日発行)/エコ建材 超コスパ仕上げ術』P.58~でご覧ください。
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