コロナ禍を経て働き方や住まい方が多様化するなか、住宅に求められる機能や価値にも変化が生まれている。住宅建築に携わるつくり手も、もう一度これまで歩んできた家づくりを振り返り、これからの日本の家づくりのあり方を問い直す良い時期にあるのかもしれない。今回は、住宅建築家の丸山弾さんに、木造住宅の可能性や、素材との向き合い方について聞いた。
本来の家づくりに立ち返る
日本は自然災害が多い国です。地震、台風、火山噴火、最近では気候変動による水害や土砂崩れも毎年のように起きています。一方で、気候は比較的温暖で水に恵まれ、木がよく育つ。壊されても、再生しやすい。こうした日本の風土において、元来人が住まう家は木や土、石など、どこでも簡単に調達でき、土に還る自然の素材を使ってつくられてきました。
少ない人口に対して資源が豊富にあった時代は、調達・利用・廃棄・分解・再生産という自然循環のサイクルが回っていた。一方、過去100年ほどの間に日本の人口が爆発的に増加し、さらに石油を原料とした新建材が登場して普及するなか、家づくりはかつての自然循環から外れてしまったと感じます。
にも関わらず、住宅は転勤や相続、不動産流通とのミスマッチなどが要因で、いまだに短寿命で取り壊され、新築が建てられる。大量生産・大量消費の慣習がいまだに続いています。日本はこのような家づくりを、一体いつまで持続できるのでしょうか。
オフィスビルや商業施設でも、最近はパブリックスペースに木質内装を採用するのを見かけますが、実際は木目調のプリントパネルであることがほとんどです。先日も近所で新築されたアパートが、見た目は鉄筋コンクリート(RC)造ながら、実はRC打ち放し調のサイディングを張った鉄骨造であると分かり驚きました。
本物でないものが身の回りに溢れていくことに危機感を持ちます。本物でないものは・・・
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この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー10月号(2022年9月30日発行)/エコ建材 超コスパ仕上げ術』P.11~でご覧ください。
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