脱炭素化をはじめ時代の要請として住宅の省エネ化・高性能化が求められるなか、物価高やウッドショック・資材ショックが住宅業界を直撃している。地域の生活者に寄り添う工務店にとっては今後、性能は当たり前として、木材・自然素材やデザイン性など地域の工務店ならではの特色を打ち出しつつ、いかにしてコストを抑えながら家づくりを行っていくかが大きなテーマとなる。
こうした状況を見据えながら、サトウ工務店(新潟県三条市)とネイティブディメンションズ一級建築士事務所(新潟市)は昨年、多雪地域の三条市内に「スケルトン・インフィル」や「規格型」、「ロングライフデザイン」といった特徴を併せ持つ超高性能(HEAT20・G3超、耐震等級3)なコンパクト住宅(総2階・24坪)を完成させた。この「多雪地域対応型ハーフ住宅」を実例として、コストを抑えながら性能、デザイン、耐久性に優れる家づくりを実現する手法を、サトウ工務店代表の佐藤高志さんに聞いた。
顧客の要望は流動的で変化する
まず、われわれつくり手が考えなければいけないのは、良い意味でプロとしてお客様の要望を聞きすぎないこと。お客様の要望を聞きすぎると間取り優先のプランになり、住宅にとって最も大切な構造や断熱といった性能が二の次になってしまう。さらに言えば、間取りなどに関するお客様の要望は実は非常に流動的で、本当に短い時間で変化する。それを考えても、そこを軸にプランをつくっていくことは、お客様自身の住まいに対する満足度を保つうえでも得策ではない。耐震・断熱など譲れない性能について確保したうえで、シンプルで使いやすく、なおかつ可変性のある間取り・プランをプロとして提案することが重要だ。
それが、凸凹のない建物のシンプルな形状や合理的な構造、断熱につながり、結果的にコストも抑えられることになる。こうした観点で、スキルのあるプロが提案する規格型住宅は、今の市場のなかで、生活者がコストを抑えて性能やデザインに優れる住宅を取得するための有効な選択肢と言えるのではないか。
外周部を固め中はフリー
大型パネルの特性を生かす
ハーフ住宅では、幅3間×奥行き4間の構造をしっかりとグリッドでつくった。内部構造柱は建物中心部の1本のみ。外周部に柱を立て、中はフリーな鉄骨造と同じ考え方だ。グリッドに則った柱、壁をフィックスして、その中でプランを考えるため、無駄なところにお金がかかっていない。
大型パネルの採用もコストダウンの要因になっている。G3超の UA値0.18W/㎡Kを実現するため、ネオマフォーム100㎜厚を張ったが、それを現場で施工するとなると相当な手間がかかる。張るのももちろんだが、100㎜厚となると丸鋸で1回では切断できず、裏返して切るといった作業も必要になってくる。そもそも100枚ぐらい使う100㎜の厚さの断熱材を置いておくスペースの確保が難しい。こうした問題を工場でつくる大型パネルが解決してくれる。重量化するサッシの搬入・施工の問題も含めて、性能が向上すればするほど手間とそれに伴うコストにおいて大型パネルの優位性が発揮されると考えている。
大手ビルダー並みの価格で建材を調達
さらに最近では、大型パネルの販売元に価格が高騰している断熱材の調達を任せることで、大手ビルダー並みの仕入れ価格で入手できるといったメリットも生まれている。・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー10月号(2022年9月30日発行)/エコ建材 超コスパ仕上げ術』P.34~でご覧ください。
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