前回(8月30日号)、ドイツの大工見習いが、早くて16歳から3年間、現場の工務店で働きながら学び、並行して職業学校に通っていることを紹介した。これは「デュアル養成システム」という。企業と学校でデュアル(二元的)に手工業職の職人を養成する仕組みだ。歴史と伝統がある職人養成制度で、欧州ではドイツおよびスイス、オーストリアで実施されている。この中欧3国の高い技術力や質の高い製品、地域の経済力を根底で支えていると言っても過言ではない。
この職人養成制度の起源は中世13世紀頃にある。都市の発展とともに手工業が栄え、徒弟、職人(ゲツェレ)、マイスターという3階級身分が成立し、業種ごとに「ツンフト(同業種組合)」ができた。各ツンフトが、徒弟が職人になるための、並びに職人がマイスターになるための実践的な職業養成と試験の内容を規定し、実施した。
ドイツでは、この制度は、18世紀末からの産業革命による手工業の低迷により廃止の危機に遭うが、手工業者たちの積極的な運動により、19世紀後半には、たくさんの業種をまとめる手工業会議所という公益法人が設立され、1897年の手工業法によって正式に、職人の養成と階級試験を取り仕切る機関となった。戦後1953年には、手工業条例ができ、1969年には職業養成法が制定され、現在行われている全国統一的な国家制度となった。
マイスターは技術者・教育者・経営者
手工業職人のデュアル養成システムは、現場での修業に大きなウエイトが置かれている。見習い生は、職業養成を始めるにあたって・・・
この記事は新建ハウジング9月30日号 11面(2022年9月30日発行)に掲載しています。
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